「僕もそれに気が付いた。現場に行って確かめたい事があったけど、だめなんだ。犬の姿なら自由に行き来できるけど、人間の姿は見える人と一緒の時でないとなれない。犬だけでウロウロするわけに行かないし……。まったく、遅いんだよ!ユースケは!」
「そうか……そうだったのか……」
「良い情報があるよ。都丸はオーストラリアに行ったけど、研修は欠席したらしいぜ」
「何だって?確か、研修がみっちりあって、最後の日は観光まで行ったと……って、お前、どうしてそれを……」
「研修も観光も参加しなかった」
「本当か?どっからその情報聞いたんだよ」
エルモは笑いながら自慢げに髪をかき上げた。
「ほら、近所にポメラニアンのチーちゃんっていう犬がいるだろ。あの娘は僕にメロメロなんだけど、ちょうど先週オーストラリアに家族で旅行するのについて行くっていうんで、聞いてきてもらったのさ。シドニーの空港にも警察犬がいて、僕の名前を出せばすぐに動いてくれるからね」
「都丸は観光でフェリーにも乗ったって……」
「フェリーに乗っただって?」
急にエルモがのけぞって笑い出したので、思わず手すりから後ろに落ちそうになった。
「おっとっと……危うく落ちるとこだった。まったく、ユースケは何でも信じちゃうんだな!都丸はフェリーには乗っているわけないよ!」
「どういうことだよ」
「都丸が欠席した研修を主催した会社に『社員犬』がいてさ、そいつが証言したよ。その社員犬、観光にもくっついて行く予定だったらしいんだけど、フェリー会社のストライキで行けなくなったらしいんだ。その時の事思い出してガウガウ文句言ってたらしいよ!ストが多くて困るって!」
「そうか、都丸は研修にも観光にも行っていない……。ではどこに……」
「ユースケ」
急にエルモが真剣な顔になった。
「あいつは危険なヤツだ。国際手配されている悪党だ」
「な、なんだって?」
「現地では手配者と会っていたらしいと警察犬が言ってた。これまでも別の投資会社に入りこんで、社長の信頼を得るようになったとたんに社長を殺して自分が引き継ぎ、会社を売り飛ばし莫大な利益を得る、という事を繰り返しやってきた」
「え……本当か……」
「殺すといっても、死因は心臓発作でね。ほら!」
エルモはユースケにおもむろにシューズを投げつけた。それは都丸が捨てたシューズであった。
「これは都丸の……」
「そうだよ。それさ、病院のゴミ箱からわざわざ取ってきてもらったんだぜ。僕の仲間の犬に頼んでね。ま、骨と引き換えに証拠をもらえるなら安いもんでしょ」
「証拠って……」
「そのシューズの靴底からは、毒物の臭いがする。恐らく、毒針に仕込んで心臓発作起こすやつ。昔、オーストラリア出身の犯罪者をつかまえた時に、そいつが持っていたんでスグ分かったよ」
ユースケはエルモを見上げた。
「もしかして、現場に仕掛けられていたんじゃないかな。毒針が」
「うわ、お前ら、何したんだよ!」
満元がいつの間にかやってきて、散乱した果物の中で立ち尽くしていた。急に周囲の雑踏の音がユースケに聞こえ始めた。
「遅いと思って外に出たら、何、おまえら果物散らばしちゃってるの?」
ユースケがチラリと手すりを見ると、すでにエルモはいなくなっていた。ユースケは立ち上がった。
「……おい、お前どこ行くんだ」哲也が叫んだ。
「悪い。急に俺、用事を思い出した…」
「おい、ユースケ!どこ行くんだ。俺の新居のお祝いはどうなる……」
ユースケは駆け出した。
「それは事件に関係することか! おーい!」
「そうか……そうだったのか……」
「良い情報があるよ。都丸はオーストラリアに行ったけど、研修は欠席したらしいぜ」
「何だって?確か、研修がみっちりあって、最後の日は観光まで行ったと……って、お前、どうしてそれを……」
「研修も観光も参加しなかった」
「本当か?どっからその情報聞いたんだよ」
エルモは笑いながら自慢げに髪をかき上げた。
「ほら、近所にポメラニアンのチーちゃんっていう犬がいるだろ。あの娘は僕にメロメロなんだけど、ちょうど先週オーストラリアに家族で旅行するのについて行くっていうんで、聞いてきてもらったのさ。シドニーの空港にも警察犬がいて、僕の名前を出せばすぐに動いてくれるからね」
「都丸は観光でフェリーにも乗ったって……」
「フェリーに乗っただって?」
急にエルモがのけぞって笑い出したので、思わず手すりから後ろに落ちそうになった。
「おっとっと……危うく落ちるとこだった。まったく、ユースケは何でも信じちゃうんだな!都丸はフェリーには乗っているわけないよ!」
「どういうことだよ」
「都丸が欠席した研修を主催した会社に『社員犬』がいてさ、そいつが証言したよ。その社員犬、観光にもくっついて行く予定だったらしいんだけど、フェリー会社のストライキで行けなくなったらしいんだ。その時の事思い出してガウガウ文句言ってたらしいよ!ストが多くて困るって!」
「そうか、都丸は研修にも観光にも行っていない……。ではどこに……」
「ユースケ」
急にエルモが真剣な顔になった。
「あいつは危険なヤツだ。国際手配されている悪党だ」
「な、なんだって?」
「現地では手配者と会っていたらしいと警察犬が言ってた。これまでも別の投資会社に入りこんで、社長の信頼を得るようになったとたんに社長を殺して自分が引き継ぎ、会社を売り飛ばし莫大な利益を得る、という事を繰り返しやってきた」
「え……本当か……」
「殺すといっても、死因は心臓発作でね。ほら!」
エルモはユースケにおもむろにシューズを投げつけた。それは都丸が捨てたシューズであった。
「これは都丸の……」
「そうだよ。それさ、病院のゴミ箱からわざわざ取ってきてもらったんだぜ。僕の仲間の犬に頼んでね。ま、骨と引き換えに証拠をもらえるなら安いもんでしょ」
「証拠って……」
「そのシューズの靴底からは、毒物の臭いがする。恐らく、毒針に仕込んで心臓発作起こすやつ。昔、オーストラリア出身の犯罪者をつかまえた時に、そいつが持っていたんでスグ分かったよ」
ユースケはエルモを見上げた。
「もしかして、現場に仕掛けられていたんじゃないかな。毒針が」
「うわ、お前ら、何したんだよ!」
満元がいつの間にかやってきて、散乱した果物の中で立ち尽くしていた。急に周囲の雑踏の音がユースケに聞こえ始めた。
「遅いと思って外に出たら、何、おまえら果物散らばしちゃってるの?」
ユースケがチラリと手すりを見ると、すでにエルモはいなくなっていた。ユースケは立ち上がった。
「……おい、お前どこ行くんだ」哲也が叫んだ。
「悪い。急に俺、用事を思い出した…」
「おい、ユースケ!どこ行くんだ。俺の新居のお祝いはどうなる……」
ユースケは駆け出した。
「それは事件に関係することか! おーい!」