「結局、あんまり大した手がかりが無いってことか! コンサル先生!」

次の日、しびれを切らした哲也が、ユースケの家に押しかけて来たのだった。

「ん、ユースケどうした?具合でも悪いのか?」

「ああ、ちょっと……」

「どうした? また昔みたいに幽霊でも見たっちゅうんじゃないだろうな」

ユースケは無言のままうなずいた。

「え? まさか図星? いやー、しばらく話をしなくなったと思ったら、また出てきたんだ…昔の仲間が」

「仲間って言うなよ!出てきたのは西脇社長だよ」

「ええ?」

「お前、部屋の中なんだから、そんなに大声で話さなくたって聞こえてるって」

「しっかし、出てくるとは、よっぽど未練があるんだな。で、どんな様子だったんだ」

「みかん食べてた」

「みかん?なんじゃそりゃ!」

「わかんないよ。でも『みかんが俺を殺した』って叫んでたんだ」

「ハア?『みかんが殺す』ってどういうことだ?ついにみかん星人が地球侵略に来たのか!ジャジャーン!」哲也はおもむろに両手を広げた。

「お前それでも刑事かよ……」あきれた顔でユースケは哲也を見たが、一向に気にしていない様子だった。

「しかしさ、その死んだ社長って本当にやり手だったんだな。そもそもああいう話は、最初は関係者しか知らないんだろ……。確か大口顧客っていう個人投資家経由でその話が来たっていうウワサじゃないか。情報は集まるところには集まるのか。俺の所には一生来ませんよ、と」

ユースケは急にひっかかる何かを感じた。

「ん……まてよ」

ユースケは、これまでの記憶を慎重にたどっていた。ふと営業の都丸の顔が思い浮かんだ。

「そうだ! 都丸は大手の銀行出身だった!」

「……え?どういう事?」

「昔いた銀行ルートで都丸がその話を知ったんじゃないかな」

「あ、そうか。だから早く情報がはいってきたんだ」

哲也は急に身を乗り出した。