その夜の事であった。

なぜか目が冴えてしまいなかなか寝付くことができず、ユースケは布団の中で何度も寝返りを打った。天井のシミが、なぜか人の形に見えて妙に気になる。

子供の頃、こういった寝付けない夜にはきまって幽霊を見た。社会人になってからは、しばらく幽霊を見る事は無かったため、もうそういった恐怖におののくことはなくなったと安心していた。

今日は妙に重苦しい感じがする。

何かがユースケの上に乗っているかのように、息をするのさえも苦しい感じである。

見ると、ユースケの上に西脇社長が正座をして座っていた。

「うわあああ!」

ユースケは恐怖のあまりに叫んだ。しかし、身体が金縛りにあったように動かない。

何分かそのままの状態であったが、ユースケはふと、西脇社長が正座をしながら何かを食べていることに気が付いた。

よく見ると、それはみかんであった。

「もうみかんが食べられないのか……いや、みかんを食べたから死んだのか……いや、それとも……」

西脇は正座しながらブツブツとつぶやいた。

しかし、だんだんと怒りがこみあげてきたのか、青ざめた西脇社長の顔が鬼の形相に変化した。突然西脇社長がユースケに飛びかかり、ユースケの首を締め出した。

「みかんが俺を殺した!」

逆上した西脇社長は、ユースケの首を締めたまま、前後左右に激しく振り回した。身体を動かすことができないユースケは、なすがままで意識が遠のいた。