その日の夜。

哲也からの電話で、営業マネージャーの都丸の面会許可が降りたので、話を聞きに行ってほしい、という依頼があった。

警察としては、既にこれといって他殺を裏付ける証拠が見当たらないことから、心臓発作による死ということで処理される方向に向かっているとのことであった。何とか早く上司を、説得させる材料を得たくてもどかしい様子が電話から伝わってきた。

都丸の入院先は都内でも有数の総合病院だった。

病院なのでさすがに犬を連れてくるわけには行かなかったが、出る直前までエルモからああだこうだと、うんざりするほど、会話を弾ませるポイントなどを説教された。ユースケはうんざりした。

「…というわけで、ユースケ、会話につまったら、何でもいいから目についた事を話してみるんだ。そこから新しい発見がある。おーい、ユースケー! 聞いてるか?」

「もう時間が無いんだってば。はいはい、わかりました」 

ユースケはまるで小姑のようなエルモから早く逃げ出したい一心で小走りに部屋から出た。
 
病院の受付で、5階のナースステーション横にある「集中治療室」と札が下げてある病室まで行くようにと指示された。

ナースステーションは数人の看護師達がきびきびと仕事をしていた。

ユースケが近づくと、すぐに一人の看護師がユースケに気付き、隣の集中治療室へ案内した。看護師から、あまり長時間話をすることは避けてください、と念を押された。