「それで、第一発見者は御社の従業員さんだったんですよね」

「そやそや。あの日も同じ話を刑事さんにさせてもろうたんですけどね。なんだか、こっちが疑われているようだったんで、本当に迷惑ですわ」

「なんであんなに朝早くに従業員さんが会社にいらしたのですか」

第一発見者は、エベレスト投資の従業員で、朝の六時過ぎに、倒れていた篠原社長を見つけた。

「ああ、その事も刑事さんにはお話したんですけどね、年末でたいそう忙しかったんで、新幹線の終電で大阪から帰ってきてそのままこの事務所に来て仕事をしとったんですわ」

「大阪から夜に戻ってきてそのまま仕事とは大変ですね」

「そうなんです。開業間近なんで仕方ないんですけどね。結局終電も無くなったので朝まで皆で飲んでたんです。それで、始発の電車の時間になったんで、一旦家に帰ろうとドアを開けたら、あのオッサンが倒れていたんですよ。全く、なんでウチらがよりによってあのオッサンの第一発見者にならなくてはいけないんやろか」

篠原社長は嫌な事を思い出したように、目をギョロリとむいた。その様子に一瞬ユースケはたじろいだ。

その時、エルモが篠原社長の傍にやってきて、ぴょこんと突然膝に前足をかけた。

ユースケは驚いて思わず叫んだ。

「こら、エルモ、足をかけるな!」

「いやいや、ええんです」

篠原社長は急に顔つきがパッと明るくなった。

「ウチも大阪の実家では犬を飼っているんで。犬好きなんですよ。こっちだとウチも家にいないもんですから飼う事ができないですやろ。おお、よしよし。かわええなあ」

篠原社長がエルモの頭をなで、エルモも尻尾を振っていた。

その様子をユースケは見つめていた。