ヒヨコは左に右に激しく移動しながら“ピヨピヨ!”と鳴き続けた。
「さぁ、先生!どっちですか!?」
冷房のあまり効いていない講義室の中で、麗亜の鼻歌もヒヨコの鳴き声もうるさくて堪らない。笹野はイライラしながら思いきって叫んだ。
「右だ!」
その答えは無論、ハズレだった。麗亜が左のコップを持ち上げると、肩でゼエゼエと荒い息使いをするヒヨコが、“コロン!”とひっくり返った。