「……ちょっと待ってくれ。その前にコップの中を見せてくれないか」
「え?バッグから取り出す時に種も仕掛もないって、見せたでしょ?」
麗亜は明らかにムッとした口調で反論した。
「いや、僕は見てない。君がいきなりコップを並べ出したから……」
なぜ教官の自分が学生相手にしどろもどろにならなければいけないのか……。笹野は冷や汗をかきながらも何とか教師の威厳を保とうと躍起になった。
「仕方ないなぁ。では!」
麗亜はそんな笹野の内心を知ってか知らずか、渋々といった風情で2つのコップを同時に持ち上げた。すると、右側のコップはもちろん空っぽだったが、左側のコップの下にはコロコロとした金色のヒヨコが“ちょこん”と座っていた。