麗亜は自分でもかなり低姿勢のつもりでピヨちゃんにお願いしてみた。しかし、残念ながら、ピヨちゃんの返事は予想通りのものだった。
“ピッピッ!”
『やなこったい!』
小さな水溜まりに“ちょこん”と座り、上機嫌でパシャパシャと水しぶきを上げるヒヨコに飼い主の必死な思いは届かない。
「まさに、本能の命じるままだわね……。もう!暑いからって、主従関係も何もすっかり忘れちゃって!!」
麗亜は立腹したが、夏の昼下がりに柔らかな金色の羽毛を輝かせ、太陽光が飛沫に反射して小さな虹を作るピヨちゃんの真ん丸な姿を見ると、本気で叱り付ける気にもならなかった。