「もうピヨちゃんたら!?」

緑豊かな温室内で野生の本能に目覚めたのか、ピヨちゃんは凄まじいスピードで緑の茂みを走り抜けて行く。行く手を阻むシダの葉を飛び越え、ビロードのような苔を踏み越え、何かに取り憑かれたように小さな体でぐんぐんと、ジャングルに分け行ってゆく。
「何か見つけたの~!ピヨちゃんたら~!嫌な予感がするなぁ……」
ゼエゼエと呼吸を乱しながら、麗亜は必死で小さなピヨちゃんの後ろ姿を追う。
「暑い!キツい!もう置いて帰っちゃうよ!!ピヨちゃんなら1人でも家に帰って来れるよね!?」
ぶつぶつと文句を言いながら汗だくでピヨちゃんを追っていた麗亜の視界が、椰子の梢をすり抜けた時、唐突に開けた。