「はぁ~!蒸し暑い!って、肝心の蝶々はどこよ?」
麗亜はキョロキョロと温室内を見回す。確かに、黒い貴婦人のような揚羽蝶の仲間や小さく可憐なミドリシジミは飛び交っているが、あのブルーの翅が見る者をたちまちに魅了する、大きく優美なモルフォ蝶はどこにもいなかった。
「これは笹野に担がれたか?と、なると……」
“ピヨピヨ!”すると突然、麗亜のショルダーバッグの口からコロコロしたヒヨコが“ピョン!”と飛び出した。
「あ!待ってよ、ピヨちゃん!!どこに行くのよ!?」
麗亜は慌てて止めたがピヨちゃんは“トテトテ!”と一直線に温室の奥へと走り出した。