「君はこのまま温室に行ってくれ。僕はトイレに行くから」
賭けに負けた笹野は観念したのか、午前の講義が終わるとその足で麗亜を自宅へと招いたのだった。笹野邸は大学から電車で15分程の閑静な住宅街にあった。広い敷地にはかなりの規模の温室まである。学生達の噂では笹野は婿養子ではないが、妻の実家が資産家でこの家も妻の資産なのだそうだ。
「さてさて?鬼が出るか蛇が出るか、ワクワクだね!」
麗亜は肩に掛けたバッグの中身にチラリと視線を走らせると、スキップしながら温室へと向かった。笹野に言われた通りに母屋から渡り廊下を抜けるとすぐに、笹野自慢の温室に到着した。