「五年から十年だって。そういえば、私達が入学する前からウサギって居たような気がする。微かな記憶だけど、私が一年生の時の担任の先生が『このウサギがうちに来てから、もう七年も経った』って言っていたっけ」

その紗季の言葉をゆっくり考える。

そして私が出した結論はこうだ。

「十二年。紗季の記憶が正しかったら、『ウサギは十一年も生きていた』ってことになるんだ」

私達が小学五年生の時にウサギは死んだ。
その時間は約五年。

そして紗季の言葉が本当ならばプラス七年。

そして合計十二年。

そう考えたら、ウサギは当時の私達よりも年上なんだと思った。
当時の私達は、まだ十一歳だったし。

同時に、私は七年前の葵の言葉を思い出した。

『最近元気ねぇよな。ずっと動かねぇし』

その理由が『長寿のウサギ』だったら?

ただ元気がなかっただけじゃなくて、『年のせいで動けない』としたら?

それに餌も全然減っていなかったし、その理由が『長寿のせいで沢山食べれない身体になっていた』としたら?

私は続ける。

「ウサギはそもそも花のせいで死んだんじゃなくて、寿命で死んだんじゃないかな?完璧な根拠はないけど、可能性もゼロではないと思うし」

その図鑑が正しければ、ウサギの寿命は五年から十年。
そして実際に生きていた年数は十二年。

平均寿命も越えているし、私達が見てきた当時のウサギは元気もなかったし。

だから長寿のウサギならば『寿命で亡くなった』って納得出来る。

でもここで樹々がある疑問を口にする。
それは、私が一番考えたくなかった現実・・・・。

「じゃなんで学校は茜と葵を責めたのかな?長年生きていたのだったら、学校もウサギの事を知っているはずだし。なんで『寿命で死んた』って、真っ先に学校は思わなかったんだろう?」

それが分かったら苦労しないって言うか・・・・。
って言うかなんで私達を真っ先に疑ったのか理解できないし。

『ウサギが長生きていた』って、なんで誰も教員は知らなかったんだろう。

頭が痛くなってきた・・・・。

「うーん、わかんないよ!」

私はそう叫ぶと共に頭を抱えた。

まるでゴールはもう目の前の気がするけど、凄くもどかしい。
凄く悔しい。

葵に手を伸ばせば届く距離なのに、見えない壁が私達を阻む。