「じ、実はそのロボット、研究所の所長さんが故意に壊れるように設定したのです」

「どうして?」

「女の子、実は病気でもなんでもなかったからです。本当は体に何一つ不自由のない女の子なんです」

案の定、誠也さんは驚いてくれた。
ってか小説読んでほしい。

「え?そうなの?じゃなんで自分は病気だと思っていたの?」

「所長であるお母さんが、『引きこもりの女の子を学校に行かせるため』の嘘です。所長さんは引きこもりの娘に『後少しの命』と嘘をついて、『死ぬ前の思い出』としてちょっとでも学校に行くように試したのですけど、女の子は『死ぬまで研究所にいる』って聞かなかったですし。それどころかロボットの友達を作って仲良くなっちゃいますし」

「なるほどね。だからお母さんは娘の作ったロボットを壊すように細工したんだ。女の子も自分の命は短命だって思っているからこそ、そこを逆手に取ってお母さんは女の子の『友達』であるロボットを壊す作戦に出たんだね。嘘でもいいから、お母さんのことを嫌いになってもいいから、娘をなんとか学校に行かせようとしたわけだ。『唯一の友達』がいなくなったら、女の子も学校に行くって言うかもしれないし。ってか、かなり複雑な話だね・・・・」

「まあ確かに複雑ですね。私もどうしてお母さんがロボットを壊すように細工した動機がわからなくて、何度も読み直しましたし。でも最後は女の子も学校に通うようにもなって、普通の女の子として生きていくって話です」

私のお話に付き合ってくれた誠也さんは笑ってくれる。

「感動的だね。今度買って読んでみようかな」

「だったら貸しますよ!家にあるので!」

「ホント?でも空ちゃん」

いつの間にか笑顔で話していた私は首を傾げる。
「ここ水族館だから。小説の話もいいけど、水族館の生き物も楽しもうよ」

その誠也さんの言葉に私は我に帰った。
同時に私の顔は真っ赤に染まる・・・・。

理由は、『変な自分』が現れていると気がついたから。
好きなことを笑顔で話す自分が、『恥ずかしい』と思ったから。

こんなの、私らしくない。

らしくないから、理不尽に誠也さんのせいにする私。
誠也さんをポカポカと叩く私。

「だって誠也さんが小説について教えてって言うから!つい知らない変な自分が現れてしまったって言うか」

誠也さんは笑う。

「ごめんごめん。でもこんなに楽しそうな空ちゃんは、初めて見たかも。俺も何だか嬉しいや」

「知らないです」

「また意地張って。相変わらず空ちゃんは子供だな」

子供と言う言葉が嫌いな私は慌てて否定する。

「こ、子供じゃないし!いや、まだ子供なんだけど、もう子供じゃないって言うか」

「あはは!なにそれ?」

「笑わないでください!」

「ごめんごめん。でも空ちゃんはまだ胸はないもんね。だからまだまだ子供だと思うけどな」

は?

今なんて言ったこらあ!