今日も何の前触れもなく早朝電話で呼び出され、僕は自転車を走らせていた。ほぼ毎日のように呼び出されることに最早疑問を持っていない自分がいる。
玄関先で配達されていた牛乳瓶とヨーグルトを持って、リビングで寝ている彼女を起こさないように台所に向かい、いつものように朝食の準備を始めた。
すると爆睡していたであろうこの店の店主が、僕が来ていることは当たり前のような顔をして、冷蔵庫のヨーグルトを持って台所を後にした。

歳の離れた姉のような存在になりつつある彼女に呆れながら、僕はすでにヨーグルトを食べ終わろうとしている彼女のもとへ朝食を運んだ。

「やはり、朝はこれを食べんと始まらんな」

そう言いながら男物のTシャツにショートパンツ姿の彼女は、並べられていくベーコンエッグやトーストを早く食べたいと目で訴えてくる。まるで子犬のような眼差しで見てくる彼女に僕もいつも通りの返答をした。

「たまには手伝ってくださいよ。いつも食べる専門ばかりなんですから」

僕の毎日はこんな感じで始まる。穏やかな朝日とたわい無い会話、そして坂の上の写真館の店主、織田 隆との朝食。彼女が嬉しそうにトーストをほおばっている姿を見ながら、僕、坂本 真の何ともない日常は今日も始まる。