「そろそろ芋煮も仕上げるぞ。響は食器と飲み物の準備を頼む。おむすびは、握り飯をテーブルに並べておいてくれ」
「はい!」

 お味噌のおいしそうな香りが漂ってきたころ、最初のお客さまがやって来た。

「お~い、一心! 来たぞ」

 司さんが河川敷に続く階段を、手を振りながら下りてくる。そのうしろからは、杖をつきながらゆっくりついてくる叔父さん。手には大きめの紙袋を提げている。
 薄手のジャケットと帽子を着こなす叔父さんは相変わらずオシャレ。司さんも、今日は一段と派手な柄のシャツでキメている。

「司さん、叔父さん。今日はふたりでありがとうございます」

 一心さんは鍋から離れてふたりに頭を下げた。私も、あとにならう。

「おふたりともいらっしゃいませ。早いですね、いちばんのりですよ」
「準備のジャマをしちゃ悪いから時間ぴったりくらいに行こうって言ったんだが、叔父さんが早めに行くってきかなくてな。よっぽど楽しみだったらしい」
「司。余計なことを言うな」

 久しぶりに会った叔父さんは、肉付きがよくなったせいか若く見える。ぴんと張った肌は皺が減って、血色もよさそうだ。見るからに健康そうなその姿に、一心さんもほっとした様子だった。

「司さん、お久しぶりね。ささ、どうぞ、まずは冷えたビール」
「おっ、わかってるねえ」

 辛党の響さんと司さんは、さっそくクーラーボックスで冷やしていたビールで乾杯している。叔父さんには椅子を勧め、紙コップに入れた冷たい麦茶を渡す。

「芋煮もよそってきますね。あ、よかったらおにぎりも選んでください」

 バットに並べた大量のおむすびは、列によって具が違う。わかりやすいように、一心さんが形や海苔の巻き方を変えて握っていた。