「今日は、(あおい)さんも来てくださるんですよね」

 響さんの元カノの碧さんとは、バーを訪ねるとよく会うようになった。休みの日も響さんとカフェめぐりやショッピングに出かけているようで、すっかり気の置けない女友達、という感じだ。
たずねると、同じように水分補給していた響さんがぱちぱちと瞬きしながらこちらを見た。

「そうよ。河原でおいしいものを食べるイベントをするのよ、って話したらふたつ返事だったわ」
「芋煮会をそんなふうに説明したのか?」

 さっそくエプロンと三角巾をつけている一心さんは、なぜか眉をひそめている。今日は板前服ではないが、長袖Tシャツにジーンズと動きやすい格好だ。私はカットソーとパンツ、食堂のエプロンで仕事中と変わり映えしない姿だが、黒いパンツに白シャツをあわせた響さんは普段の私服よりもカジュアルだ。

「そうよ。別に間違ってないでしょ?」
「間違ってはいないが、バーベキューみたいな若者向けの行事だと勘違いさせてもな」
「一心ちゃんがそんなリア充みたいな行事を仕切るわけないじゃない! そのくらいわかってるわよ、碧だって」
「……そうか」

 一心さんは納得しながらも、若干腑に落ちない表情をしていた。

「あと来てくださるお客さまは、司さんと司さんの叔父さん、夏川先生と子どもたちですよね。まごころ通りからは、ミャオちゃんとオーナー夫妻、大場さん」

 みんなの顔をひとりひとり思い出しながら、指折り数えていく。子どもたちは、夏野菜カレーを作った学習班の五人以外にも、クラスの子が何人か参加してくれるそうだ。

「そうだ。芋煮が仕上がるころには揃うだろうな」

 久しぶりに会う人たちも多く、楽しみでそわそわしてくる。集合をお昼にしたから、今は十一時を過ぎたころ。準備にもじゅうぶん時間がある。