「わあ、栗ご飯!」
私の歓声とはうらはらに、お父さんは失敗したような表情で頭をかいていた。
「おっと、おにぎりならもうすでにあったのか……。余計なことしちまったかな」
メニューがかぶってしまったことに対して気にしている様子だったが、一心さんはふっと表情をゆるめて栗ご飯のおにぎりにかぶりついた。
「――うまいな。ありがたくいただくよ。小ぶりのおにぎりならふたつくらい食べられるだろうし、みんな喜ぶと思う」
「そうか」
お父さんは照れくさそうな表情を隠そうと必死になっていて、お母さんはそんなふたりを見て口に手を当てて微笑んでいた。
芋煮汁を渡したお父さんとお母さんは、テーブル近くに用意された折り畳み椅子に揃って腰かける。
私と一心さんも自分たちの芋煮をよそい、芋煮とおにぎりのおかわりは自由にどうぞということと、一心さんのお父さんから栗ご飯おにぎりの差し入れがあることも声を張ってアナウンスした。
さて、やっと芋煮汁が食べられる。私は親子団らんをジャマしちゃ悪いかなと思って響さんたちに合流しようとしたのだが、お母さんに手招きで呼ばれた。
「あの、いいんですか?」
「なにがだ? おむすびも来い。早く食べたいだろ」
「は、はい」
一心さんも気にしていない様子なので、そわそわしながら味沢一家の輪に加わった。
「結さん、先日はありがとうね。お父さんの体調もすっかり良くなったし、そろそろお礼の食事会を開こうと思うんだけど、いつがいいかしら」
元気なのはお父さんの溌剌とした様子を見ていればわかった。関節炎も、薬でだいぶ改善したらしい。
「あ、私はいつでも……。あ、でも響さんも呼ぶなら、バーの定休日かお昼がいいと思います」
「そうか、なら食堂の定休日の昼に来てもらうか。今日も店は一日休みにしたんだろう? 慰労が必要といっても、あまり親が何度も休ませるのもな。過保護だと思われてしまう」
「もうすでに思われているんじゃないか?」
からかうような口調の一心さんと、むっとするお父さん。ふたりのやりとりを聞きながら、お母さんと一緒に笑ってしまった。
私の歓声とはうらはらに、お父さんは失敗したような表情で頭をかいていた。
「おっと、おにぎりならもうすでにあったのか……。余計なことしちまったかな」
メニューがかぶってしまったことに対して気にしている様子だったが、一心さんはふっと表情をゆるめて栗ご飯のおにぎりにかぶりついた。
「――うまいな。ありがたくいただくよ。小ぶりのおにぎりならふたつくらい食べられるだろうし、みんな喜ぶと思う」
「そうか」
お父さんは照れくさそうな表情を隠そうと必死になっていて、お母さんはそんなふたりを見て口に手を当てて微笑んでいた。
芋煮汁を渡したお父さんとお母さんは、テーブル近くに用意された折り畳み椅子に揃って腰かける。
私と一心さんも自分たちの芋煮をよそい、芋煮とおにぎりのおかわりは自由にどうぞということと、一心さんのお父さんから栗ご飯おにぎりの差し入れがあることも声を張ってアナウンスした。
さて、やっと芋煮汁が食べられる。私は親子団らんをジャマしちゃ悪いかなと思って響さんたちに合流しようとしたのだが、お母さんに手招きで呼ばれた。
「あの、いいんですか?」
「なにがだ? おむすびも来い。早く食べたいだろ」
「は、はい」
一心さんも気にしていない様子なので、そわそわしながら味沢一家の輪に加わった。
「結さん、先日はありがとうね。お父さんの体調もすっかり良くなったし、そろそろお礼の食事会を開こうと思うんだけど、いつがいいかしら」
元気なのはお父さんの溌剌とした様子を見ていればわかった。関節炎も、薬でだいぶ改善したらしい。
「あ、私はいつでも……。あ、でも響さんも呼ぶなら、バーの定休日かお昼がいいと思います」
「そうか、なら食堂の定休日の昼に来てもらうか。今日も店は一日休みにしたんだろう? 慰労が必要といっても、あまり親が何度も休ませるのもな。過保護だと思われてしまう」
「もうすでに思われているんじゃないか?」
からかうような口調の一心さんと、むっとするお父さん。ふたりのやりとりを聞きながら、お母さんと一緒に笑ってしまった。