「おむすびはまだ仕事があって大変でしょ? ミャオは私たちが一緒にいるわ」
「ミャオちゃん、一緒に芋煮の列に並ぼう」

 ミャオちゃんが私を手伝っていることに気づいた響さんと碧さんが、声をかけてくれた。ミャオちゃんもうなずいて碧さんにぴったりくっついているし、私はほっとして頭を下げた

「じゃあよろしくお願いします。私は一心さんと一緒に芋煮を配ってきますね」

 一心さんの横に戻ると、「お疲れ」と短くお礼を言われた。私も「はい」と小声で返事をする。私もこちらの――こころ食堂の主催者側にいるんだなと実感して、紺色のエプロン姿が少しだけ誇らしくなる。

「一心くん。こっちのお鍋はなあに?」

 中くらいの鍋に興味津々なのは大場さん。ぎっくり腰はすっかり回復して、今は同居が始まった娘さん夫婦のために忙しそうだ。お孫さんも、もうすぐ生まれるらしい。

「渋皮煮です。食後に振る舞おうかと作ってきました」
「まあ、本当? 作るのが大変だから、渋皮煮なんてもう何年も食べてないわ。楽しみだわ~。余ったら少し持ち帰ってもいいかしら。大好物なのよ」
「はい、もちろん」
「それで、こっちのお鍋は?」

 蓋をかぶせたままの小さなお鍋を指差す大場さん。

 一心さんは蓋を取って中を見せることなく、「どうぞ」と話を遮るように芋煮汁を手渡した。