十二時少し前になると、残りのみんなが一気にやって来た。

「碧~! こっちよ!」

 響さんは碧さんと手を取り合ってはしゃいでいるし、子どもたちは芋煮の鍋と一心さんに群がっている。私は子どもたちを引率してきた夏川先生のもとに向かった。

「夏川先生、お久しぶりです。今日はわざわざ来てくださってありがとうございます」

 夏川先生は、二学期から教職に復帰した。子どもたちの担任にも戻れてうれしそうだ。プレッシャーがないわけじゃないけれど、以前とは違う気持ちで子どもたちと接することができていると、報告をいただいていた。

「こちらこそ、子どもたちもたくさん参加させてくださってありがとうございます。みんな今日をとても楽しみにしていたんですよ」

 大場さん、猫カフェのオーナー夫妻にも挨拶をすませると、ミャオちゃんが抱きついてきた。ゆるっとしたトレーナーワンピと柄レギンスが猫耳つきキャップに合っていてかわいい。

「ミャオちゃん! 来てくれてありがとう。どうしたの?」

 腰に手を回したまま、構って欲しそうな表情でじっと見上げてくる。知らない大人がいっぱいいるところで不安なのかもしれない。

「一緒におにぎり配ろうか。ミャオちゃんは麦茶をついであげてくれる?」

 ほっとしたようにうなずくミャオちゃんの手を取る。
 一心さんが子どもたちに芋煮をよそってあげている間に、ミャオちゃんと一緒におにぎりと飲み物を配る。芋煮で両手がふさがってしまうので、おにぎりはテーブルの上に置いてもいいようにアルミホイルに巻いて手渡した。
 芋煮汁を受け取った子どもたちは、みんなほくほくした顔でお椀を覗き込んでいる。

「みんな、他の人のジャマにならないところで食べないと」
「はぁい」

 夏川先生のひとことで、子どもたちが土手に移動する。風に乗って、「うめぇー」「おいしい~!」という歓声が聞こえてきて、私の頬もゆるんでしまう。
 大人たちに芋煮汁をよそっている一心さんをちらりと見ると、同じようにうれしそうな顔をしていた。