嗚呼、博士。
私の製造者兼管理者が博士で良かったと心から思います。
落石のダメージで言葉を発することが難しいので、心のデータに刻んでおきます。
博士、博士を守ることは私の使命です。
博士はこの国を守るために、働いています。誰かの未来を守るために、働いています。
だからそんな博士を守るのは、私の使命です。博士、博士を守らせてください。守りたいって思ったので守らせてください。
人を守るのは簡単ではありません。大切な人たった一人すら、守るのは簡単ではありません。実際、私は黒木梨華を守り抜くことに失敗してしまいました。たった一人すら、守ることが出来ませんでした。
失敗した過去と記憶があっても、守りたいと思う気持ちを抑える方が難しく、やはりあなたを守りたい、守り抜きたいと思いました。
たとえ私が傷つこうが、構いません。あなたを守るためなら、そんなことちっとも気にしません。見返りなんて求めていません。何故なら既に受け取っていますから。あなたが私に愛を教えてくれました。
そのお返しとしてはあまりに小さいですが、せめてあなたを守りたいのです。愛を、愛で、返したいのです。
博士、これは命令ではありません。私の意志で、あなたを守りたいと思いました。
だから私の使命なのです。それだけ、それだけ忘れずにいてください。それだけで、私は満足です。
MN-601、萌葱翠。任務完了です。


 ▲