「ただいま」

日が暮れてすっかり暗くなった頃に帰宅すると、いつもは寝ている兄が珍しく起きていて私の帰りを今か今かと待っていた。

「おかえり、千佳。サンドイッチ美味かったか?誰か一緒に食べるたまごサンドは格別だったろう?」

洗面所に行く私の後ろをそわそわしながらついてきては、一度も求めたことない感想をねだってくる。

「ねえ、どうして杉野くんと一緒に食べたって知ってるの?」

「ひとりじゃさみしいだろうから一緒に食べるように誘ってくれってあいつに頼んだの、俺だも~ん」

兄は悪びれもせずにそう言うと、ニシシと歯を出し子供のように屈託なく笑った。

……道理でおかしいと思った。

杉野くんは最初から弁当がもらえると知っていて、手ぶらだったのだ。

高校入学から二か月経っても未だにひとりでお弁当を食べている私に同情してくれたわけ?

「……余計なことしないでよ!!」

私は通学バッグから空のお弁当箱を取り出すと、兄に向って投げつけた。

お節介な兄にも、簡単に言うことを聞く杉野くんにも、腹が立って仕方なかった。

「お兄ちゃんのお弁当なんてもう食べない!!」

私は階段を駆け上がると後ろ手に部屋のドアを閉めた。そのまま、ふらふらとベッドに倒れ、うつ伏せになって枕に顔を押し付ける。

兄の前では私はいつも五歳の小さな女の子に戻ってしまう。