(今日のご飯はなにかな~)

一日の内で一番楽しみと言っても過言ではないお昼休みがやって来ると、今日もルンルン気分で通学バッグからお弁当箱を取り出す。

午前中に体育の授業があったせいで、お腹はもうペコペコ。お腹と背中がくっついてしまうんじゃないかってくらい、お腹が空いて仕方ない。

いつものように机の上にお弁当箱を広げた私は、手を合わせてご飯が美味しくなる魔法の呪文を唱えたのだった。

「いただきます」

そう言うやいなやご飯が入っている下段に続いて、おかずの入っている上段の蓋を開けていく。その手がピタリと止まる。

(いんげんか……)

上段の隅にちょこんと陣取る緑色の野菜を見つけ、私はちょっぴりげんなりした。

鶏肉と蓮根の照り焼き、チーズ入りちくわ、ごぼうサラダは大好きなのに……いんげんの胡麻和え、君はダメだ。

箸でいんげんをつまんで、にらめっこすること五分。

いんげんを口にする勇気がどうしても湧いてこず、一旦もとの位置に戻す。

(いや、分かってるよ?)

往生際が悪いなと自覚し、自分で自分を納得させにかかる。

兄が作ったものは、まずかった試しがない。したがって、口に入れさえすれば美味しく食べられるのは明白だ。

でも、私は知っている。お前は茹でると芯がなくなってへにゃっとして頼りなく見えるけれど、食べると一気に青くさい主張の強いお野菜だってな。

……やっぱりいんげんは苦手だ

(うう……。青臭い……)

もきゅもきゅっと妙な歯ごたえを口の中に残していくいんげんを、ひとつひとつ口の中に入れ噛みちぎっていく。すりおろした胡麻の風味のおかげか、そこまで嫌悪感なく飲み込むことが出来たのがせめてもの救いだった。

「ごちそうさまでした」

無事、今日もお腹いっぱいになった私は来るべき来週の中間テストに向けて、古文のノートを見直し始めた。