君はきっとまだ知らない

「ねえ、千秋。この他にもたくさん写真撮ってる?」
 しばらく考えを巡らせたあと、ある思いつきを得て私は口を開いた。
「え? うん。家にはあるよ」
「よかった。ねえ、千秋の写真って、文化祭の発表に使えそうだよ」
 桜、風船、紫陽花、ひまわり、祭り、紅葉、稲穂、雪。どれも春夏秋冬の風物詩だ。これを展示するだけでも、立派な『四季を愛でる会』になるんじゃないだろうか。
 いいことを思いついた、気がする。突破口になりそうな予感。急にやる気が湧き上がってきた。
「千秋の写真、明日、春乃と冬哉にも見せてみようよ。それで、写真を使った発表にできないか、みんなで話し合って……。あ、でも、その前にまず春乃に謝らなきゃ。冬哉と千秋にも、空気悪くして申し訳ないことしちゃったし……。それで、今度こそちゃんと私が頑張ってみんなを引っ張るから、少しでもいい発表になれば、さっき春乃に言っちゃったことも、少しは償えるかな……。どんな発表にすればいいと思う? 写真を展示するだけじゃ、写真部の発表と変わらないよね。もっと四季を全面に押し出さなきゃ。どうすればいいかな、たとえば、季節ごとに整理して綺麗に並べて、それぞれの写真に合う俳句や詩を一緒に飾るとか……」
「光夏」
 頭をフル稼働させてぐるぐると考えを巡らせていたとき、千秋が静かに私を呼んだ。
「光夏。そんなことは、どうでもいいんだ」
 はっと息を呑む。突然強い言葉を向けられて、なにかが胸に突き刺さったような感じがした。
 謝ろうと口を開きかけたとき、千秋がすっと片手を上げて私を制止した。
「光夏は、そんなふうに、自分ひとりでなんでも背負い込んで、ひとりで頑張らなくていいんだ」
 どくどくと脈うつ音が耳にこだまする。また冷や汗が出てきそうだった。
「あ、ごめん……。私また、みんなの意見も聞かずにひとりで勝手に突っ走っちゃって……。ほんと駄目だな……」
「そういう意味じゃないよ」
 千秋がきっぱりと言った。
「光夏は、駄目なんかじゃない。これっぽっちも駄目なんかじゃない」
 私はまた息を呑んだ。
「な、なに言って……」