笑い声の余韻を追いかけるように、何気なく振り向いて校舎を見上げた瞬間、心臓を鷲掴みにされたような気がした。反射的に俯き、両側に垂れてきた髪で顔を隠す。
三階の教室の窓に、島野の姿が見えた。彼はこちらを見下ろしていた。
やばい、見られた? ざっと血の気が引き、額に冷や汗が滲み、指先は氷のように冷たくなる。
私だと気がついただろうか。だとしたら、三人が私と親しくしていることを知られてしまったことになる。千秋たちまで嫌がらせを受けることになるかもしれない。どうしよう。
ばくばくとうるさい鼓動の音。ぎゅっと制服の襟元を握りしめ、そろそろと目を上げる。
予想に反して、島野はもうこちらを見ていなかった。何事もなかったかのように前を向き、誰かと談笑している。
私だと気がつかなかったのだろうか。もし気づいたなら、あいつの性格的ににやにやしながら見てくる気がする。『へえ、お前、そいつらと仲がいいのか。イイこと知っちゃった』とでも言いたげに。
たぶん、気づかなかったのだろう。ただ笑い声が聞こえたから視線を落としただけで、すぐに目を戻したのだ。私の姿は、頭上に生い茂る銀杏の枝葉が隠してくれたのかもしれない。
そうは思っても、やっぱり不安だった。私のせいで、この三人が不愉快なことを言われたり、嫌な思いをすることになったら……。
俯いて拳を握りしめていると、ふいに春乃が「ねえ、光夏ちゃん」と私を呼んだ。
「あっ、ごめん、ちょっとぼーっとしてた……」
「ううん、それは全然いいんだけど」
あのね、と彼女は少し迷うような素振りを見せてから、
「なにか……悩みごととか、あるんじゃない?」
唐突にそう言った。
また、ぎゅっと心臓が縮こまる。引きかけた冷や汗がまた滲む。
冬哉が「春乃」と彼女を手で制した。千秋は黙って私を見ている。
三人の様子に、いきなり足下の地面がぐらぐらと揺らぐような感覚に陥った。
もしかして、なにか、知っているんじゃないか? 今の私の本当の姿を、知られているんじゃないか?
動揺と不安、緊張、恐怖と焦燥。色々な感情がごちゃまぜになって、呼吸が浅くなっていく。
三階の教室の窓に、島野の姿が見えた。彼はこちらを見下ろしていた。
やばい、見られた? ざっと血の気が引き、額に冷や汗が滲み、指先は氷のように冷たくなる。
私だと気がついただろうか。だとしたら、三人が私と親しくしていることを知られてしまったことになる。千秋たちまで嫌がらせを受けることになるかもしれない。どうしよう。
ばくばくとうるさい鼓動の音。ぎゅっと制服の襟元を握りしめ、そろそろと目を上げる。
予想に反して、島野はもうこちらを見ていなかった。何事もなかったかのように前を向き、誰かと談笑している。
私だと気がつかなかったのだろうか。もし気づいたなら、あいつの性格的ににやにやしながら見てくる気がする。『へえ、お前、そいつらと仲がいいのか。イイこと知っちゃった』とでも言いたげに。
たぶん、気づかなかったのだろう。ただ笑い声が聞こえたから視線を落としただけで、すぐに目を戻したのだ。私の姿は、頭上に生い茂る銀杏の枝葉が隠してくれたのかもしれない。
そうは思っても、やっぱり不安だった。私のせいで、この三人が不愉快なことを言われたり、嫌な思いをすることになったら……。
俯いて拳を握りしめていると、ふいに春乃が「ねえ、光夏ちゃん」と私を呼んだ。
「あっ、ごめん、ちょっとぼーっとしてた……」
「ううん、それは全然いいんだけど」
あのね、と彼女は少し迷うような素振りを見せてから、
「なにか……悩みごととか、あるんじゃない?」
唐突にそう言った。
また、ぎゅっと心臓が縮こまる。引きかけた冷や汗がまた滲む。
冬哉が「春乃」と彼女を手で制した。千秋は黙って私を見ている。
三人の様子に、いきなり足下の地面がぐらぐらと揺らぐような感覚に陥った。
もしかして、なにか、知っているんじゃないか? 今の私の本当の姿を、知られているんじゃないか?
動揺と不安、緊張、恐怖と焦燥。色々な感情がごちゃまぜになって、呼吸が浅くなっていく。