そのとき、春乃が微笑んで私を見つめながら、「でも、私」と言った。
「たとえば『今日は誰々が遊びたいこと決めて』とか言われても、変に気をつかっちゃって、自分がやりたいことじゃなくて他の人が好きそうなこと答えてたかも」
すると冬哉が「だよなあ」と頷いた。
「だから、光夏が決めてくれて助かってたよ」
千秋も隣で「うん」と首を縦に振る。
「俺も、光夏が外遊びの日とか決めてくれなかったら、ずーっと家で遊んでる不健康な子どもだったと思う」
まさかそんなふうに言ってもらえるなんて思ってもいなかったので、息が止まりそうになった。
「でも、冬哉と春乃が習い事の日に、光夏とふたりで家で遊ぶのも、すごく楽しくて好きだったよ。俺が絵を描いてて、光夏は隣でずっと、何時間でも見ててくれて、すごいとか上手いとかたくさん言ってくれるから、すごく嬉しかったんだ」
千秋は懐かしそうな顔でふふっと笑った。
彼の言葉で、私もあのころに思いを馳せる。週に一度、冬哉はサッカークラブ、春乃はピアノ教室に行く日が重なるときがあって、その日はいつも私と千秋はふたりで遊んでいた。どちらも外より中で遊ぶほうが好きだったから、お絵描きやテレビゲームをして、のんびりと過ごした。
千秋の家には大きな窓があって、そこから射し込む光が彼を照らして、ときどき眩しくて直視できなかったのを思い出す。ふたりで過ごす時間は、いつもよりずっとゆっくりと流れている感じがして、それなのにあっという間に終わってしまうのが不思議だった。
四人で遊ぶのももちろん楽しかったけれど、千秋とふたりで遊ぶ日を、あのころ私はいつも心待ちにしていた。
「光夏はいつでも俺たちのために色々考えてくれてたよね」
「……でも、私はただ、……」
口を開いたものの、どう言えばいいか分からなくてまた口を閉じる。
私は、みんなのためになんて、ちっとも考えていなかった。ただ、せっかくの遊べる時間を無駄にすることや、不公平になることが我慢できなくて、つまりは自分のためにしていたこと、私のエゴだったのだ。
「だけど、光夏は、自分の好きな遊びは全然やろうって言わなかったよね」
「え……」
唐突な千秋の言葉に、私は目を瞬(しばたた)かせた。
「たとえば『今日は誰々が遊びたいこと決めて』とか言われても、変に気をつかっちゃって、自分がやりたいことじゃなくて他の人が好きそうなこと答えてたかも」
すると冬哉が「だよなあ」と頷いた。
「だから、光夏が決めてくれて助かってたよ」
千秋も隣で「うん」と首を縦に振る。
「俺も、光夏が外遊びの日とか決めてくれなかったら、ずーっと家で遊んでる不健康な子どもだったと思う」
まさかそんなふうに言ってもらえるなんて思ってもいなかったので、息が止まりそうになった。
「でも、冬哉と春乃が習い事の日に、光夏とふたりで家で遊ぶのも、すごく楽しくて好きだったよ。俺が絵を描いてて、光夏は隣でずっと、何時間でも見ててくれて、すごいとか上手いとかたくさん言ってくれるから、すごく嬉しかったんだ」
千秋は懐かしそうな顔でふふっと笑った。
彼の言葉で、私もあのころに思いを馳せる。週に一度、冬哉はサッカークラブ、春乃はピアノ教室に行く日が重なるときがあって、その日はいつも私と千秋はふたりで遊んでいた。どちらも外より中で遊ぶほうが好きだったから、お絵描きやテレビゲームをして、のんびりと過ごした。
千秋の家には大きな窓があって、そこから射し込む光が彼を照らして、ときどき眩しくて直視できなかったのを思い出す。ふたりで過ごす時間は、いつもよりずっとゆっくりと流れている感じがして、それなのにあっという間に終わってしまうのが不思議だった。
四人で遊ぶのももちろん楽しかったけれど、千秋とふたりで遊ぶ日を、あのころ私はいつも心待ちにしていた。
「光夏はいつでも俺たちのために色々考えてくれてたよね」
「……でも、私はただ、……」
口を開いたものの、どう言えばいいか分からなくてまた口を閉じる。
私は、みんなのためになんて、ちっとも考えていなかった。ただ、せっかくの遊べる時間を無駄にすることや、不公平になることが我慢できなくて、つまりは自分のためにしていたこと、私のエゴだったのだ。
「だけど、光夏は、自分の好きな遊びは全然やろうって言わなかったよね」
「え……」
唐突な千秋の言葉に、私は目を瞬(しばたた)かせた。