「……で、ね。そうやって出たたくさんのアイディアを、最後にみんなで一つずつ吟味して、整理して、どれがいいかなって話し合う」
「へえ、楽しそう!」
 春乃が可愛い笑顔で言った。子どものころから可愛かったけれど、高校生になって少し大人っぽさも加わり、さらに可愛くなった気がする。
「ふふふ、なんか昔が懐かしいね」
 春乃がやけに嬉しそうに言うと、千秋が頷いた。
「うん、俺もそう思ってた。みんなで遊ぶとき、光夏がいつもこうやって俺たちを引っ張ってまとめてくれてた」
 すると冬哉も大きく頷いた。
「ちゃらんぽらんな俺らに呆れた顔しながらも、絶対に見捨てないで、てきぱき色々決めてくれてたよな」
 思いも寄らないことを言われて、私は言葉を失う。
「そうそう。いっつも光夏ちゃんが、今日はあれして遊ぼう、次はこれで遊ぶよ、って決めてくれてた」
 昔の記憶が甦ってくる。私たちはいつも四人で遊んでいたけれど、性格も好きなことも全く違うので、なにをして遊ぼうかという段になると、なかなか決まらなかった。そうこうしているうちに家に帰らないといけない時間になることもあった。
 それで私なりに考えて、それぞれの好きな遊びを順番にバランスよく公平になるように提案することにしたのだ。
千秋が好きなのはお絵描き、粘土、砂遊び。春乃が好きなのは人形遊び、あやとり、お手玉。冬哉が好きなのは鬼ごっこ、隠れんぼ、ボール遊び。それを考慮して、『今日は何々で遊ぼう』と毎日宣言していた。勝手に。
 苦い記憶だ。調子に乗って、みんなの気持ちも考えずに仕切って。
 そして今、その悪い癖がまた出てしまった。
「俺、春乃のリカちゃん人形遊びは苦痛だったなあ」
「私だってボール遊び苦手だから冬哉の日は嫌だったよ」
 ほら、やっぱり。嫌な思いをさせていたのだ。きっと千秋にも。千秋は大人しくて、家で静かに遊ぶのが好きだったから、私の提案で外遊びに連れ出されて、迷惑していたのだろう。
 今になって思い返せば、私が一方的に遊びを決めるんじゃなくて皆に訊くべきだった。私はどうして人の気持ちを考えずに自分の考えだけが正しいと思って押しつけてしまうんだろう。
 今だってこうして、ブレインストーミングだとか偉そうなことをしたり顔で言って、みんなの意見も聞かずに勝手に話し合いを進めようとしていた。全く変われていない。島野たちが『でしゃばり女』『仕切り屋』と小馬鹿にしているのも大いに納得できる。私に落ち度があるから、陰口を叩かれるのだ。