「それにしても、あなたたちって、仲が良かったの? 意外な組み合わせだよね」
 ぐるりと視線を巡らせた先生の問いに、私たちは顔を見合わせた。
「今まで、一緒にいるの見たことなかった気がするけど」
「先生、よく知ってますね」
 呟くと、春乃も「友達関係とか知ってるんですね」と目を丸くして言った。
「生徒の交遊関係を把握するのも大事だからね」
 先生はにっと笑った。
「誰と誰が仲良し、誰と誰は話さない、誰と誰はちょっと険悪……みたいなのを知っておくと、なにかと配慮もできるしね」
「さすが先生!」
 冬哉が大袈裟に手を叩くと、先生は少し照れくさそうに「やめなさい」と笑った。
「俺たち、幼馴染なんです。幼稚園とか小学校のころから」
 千秋の答えに先生が微笑んだ。
「ああ、そうなの? いいね、高校まで縁が続くなんてなかなかないよ。大事にしなさいね」
「はい、ありがとうございます」
 私はそんなふうにさっぱりとは答えられなくて、ひとり囁くように「……はい」と俯いた。
 縁が続いていたわけではなくて、ずっと途切れていたものが、今たまたま少し交わっているだけだ。でも、そんなことはあえて口に出すことではないので、黙っておく。
「それはさておき、いいんじゃない? 有志発表。四季を愛でる、なんてすごく文化祭らしくて、いいと思うよ。男女混合の団体も珍しいしね。期待してるから頑張って」
「ありがとうございます」
「じゃあ、この登録用紙に記入して、今週中に持ってきてね」
「はい!」
 春乃が嬉しそうにプリントを受け取った。
「じゃあ、よろしくお願いします」