思い立ったが吉日、と千秋が言うので、帰る前にみんなで職員室へと向かった。
「先生、お忙しいところすみません」
 いちばんに生徒会担当の先生に声をかけたのは、意外にも千秋だった。
 昔の習慣で、自分が代表して交渉しようと思っていた私は、唖然として彼を見上げる。こういうとき進んで前に出るタイプでは絶対になかったのに、この数年でなにがあったんだろう、と驚きを隠せない。
「あの、文化祭で、このメンバーで展示か発表をしたいんですけど、どうすればいいですか?」
 すると先生からは呆気にとられたような反応が返ってきた。
「ええと、有志発表ってこと?」
「はい。四季を愛でる会っていうサークルを立ち上げたので、発表の機会がほしいなと思って。たぶん展示になるかなと思うんですけど」
 こっぱずかしいサークル名をさらりと言ってのける千秋、さすがだな。
「そうなの? 面白そうだね。ただ、団体の登録は先週が締め切りだったんだけど……」
「え、そうなんですか?」
 思わず声を上げると、春乃が「先週だったんだね」と呟いて、困ったような顔で私を見た。
「ね……締め切り過ぎちゃってるのか……」
 朝礼のときはいつも気配を殺すことばかり考えているので、どうやら連絡を聞き逃してしまったらしく、全く知らなかった。募集されていたかどうかさえ記憶にない。
「あの、それって、もう、どうにもならない感じですか?」
 ここまで来て簡単には諦められなくて、思わず粘ってしまった。千秋も同じだったらしく、
「なんとかなりませんか?」
 と珍しく食い下がる。冬哉も両手を合わせて拝むポーズで「先生様、そこをなんとか!」と叫んだ。
 私たちの必死な様子に、先生は肩をすくめて笑った。
「本来なら締め切り過ぎたらだめなんだけど、今回はたまたま有志団体の枠がまだ空いてるから、特別に受け付けてあげるよ」
「いいんですか!? ありがとうございます」
 私が頭を下げると、三人も「ありがとうございます」と後に続いた。