考えごとばかりしているうちに、いつの間にか午前中の授業が終わり、昼休憩に入った教室がざわめき出していた。
 みんなが楽しげにお弁当を広げておしゃべりに興じるこの時間は、嫌がらせが始まってから最も居心地の悪い時間になっている。
 私はのろのろと腰を上げ、とりあえずトイレにでも行こうかと出入り口に向かった。
 ドアの前には、女子の集団がたむろして、他のクラスの女子と笑い合っている。このままでは通れない。
「ちょっとごめん、通らせて」
 小さく言ってみたけれど、当然ながら、誰ひとり反応せず、動きもしなかった。そりゃそうか、と自嘲的な笑みを浮かべながら、私は彼女たちの隙間を縫うようにしてドアをすり抜けた。
 やっぱり、嫌だ。過去の私を知っている千秋たちに、こんな状況に陥っている今の私を、絶対に知られたくない。
 せめてあの三人の前でだけは、昔のままの私でいたい。幼馴染たちの心の中だけでも、あのころの私の面影を残しておいてほしい。特に、いつも私のことを「光夏はすごいね」と言ってくれていた千秋の中では……。
 なにより、クラス中から無視されて、不様に俯いている私を知られるのは、恥ずかしくて堪らない。
 だから、サークルなんて入れるわけがない。共に過ごす時間が増えたら、共通の知り合いから私の話が出るかもしれない。そうなったらきっとばれてしまうから。
 一度分かれた道は、もう二度と交わることはないのだ。