教室で机に突っ伏して目を閉じていると、そんなつもりはないのに、昔の思い出が勝手に甦ってくる。
 あのころの私は、今思えば本当に馬鹿だった。
 自分はしっかりしていて、正義感があって、責任感もあって、リーダーシップがあると自負していた。ほとんど毎学期学級委員をして、話し合いなどのときも積極的に前に出て、まとめ役をしていた。陰で嫌味まじりに『仕切り屋』と言われていることも知っていたけれど、『できる人がやらなきゃまとまらないでしょ』などと偉そうなことを思っていた。
 千秋たちといるときも同じで、自分が中心になって今日はなにをして遊ぶか決めたり、役割分担をしたり、時間配分を決めたり、とにかく何につけても私が取り仕切っていた。それに、ちょっと天然な春乃と一見無愛想な千秋は周りから勘違いされることも多くて、それを解消して二人を守るのも自分の仕事だと気負い、無責任な噂話をしている人の中に乗り込んで、彼らがどんなに優しくていい子なのかを語って聞かせたりもしていた。頼まれてもいないのに出しゃばってばかりいたのだ。思い出すだけで恥ずかしくなる。
 でも、昔の私は、そんな自分をなかなか気に入っていたのだ。生意気な子どもだと我ながら思うけれど、自分こそがやらなくちゃ、自分こそが戦わなきゃ、自分こそが守らなきゃ、と本気で思っていた。
 そんな『理想の自分』に、当時はそれなりに近づけていたと思う。たとえ自己満足だとしても。だから私の中では、あのころの記憶は、遠くで音もなく光る小さな花火のようなものだ。決して近づけない、触れられない、失われた輝き。