「おっ、光夏、ちょっとは入る気になってきたか!?」
「……いや、別に。ただ気になっただけ」
 即座に否定したけれど、冬哉はめげずに、待ってましたとばかりに声を張り上げた。
「俺たちのサークルは、四季を愛でる会、その名も『FOUR SEASONS』!」
「……はい?」
 想像を絶する答えに、私は唖然としてしまった。
 なに、四季を愛でる会って。老人サークルじゃないんだから。しかもFOUR SEASONSって。バンド名か。
 ただ、彼らの思考回路は理解できる。私たちは昔、それぞれの名前にたまたま春夏秋冬が入っていたことから、勝手に自分たちのグループを『季節の会』とか『チーム四季』とか名づけていたのだ。そういえば、秘密基地にも看板を立てたりしていた。思い出しただけで恥ずかしい。黒歴史ってやつだ。
 私は肩をすくめて言った。
「なにそのサークル名……さらに入る気なくした」
「ってことは、ちょっとは入る気があったってこと?」
 突き放すつもりで言ったのに、千秋が即座にそんな返しをしてきたので、度肝を抜かれてしまった。
「千秋ってそんなポジティブシンキングだったっけ……?」
 なんだか、この三人と話していると、全身からどんどん力が抜けていく感じがする。でも、ちょっとだけ息がしやすいような気がするのは、気のせいだろうか。
「ていうか、なにするの? そのサークル……四季を愛でる会って……」
 完全に毒気を抜かれてしまって、気になっていたことを素直に質問すると、冬哉が「よくぞ訊いてくれました」と笑った。
「こう、四季折々にな、季節を愛でて……」
 腕組みをして満足げに語る彼を見ながら、ずいぶんぼんやりした活動方針だな、と呆れ顔をすると、春乃が「そうそう!」と頷いて援護射撃を始めた。