その瞬間、目が覚めた。
脳裏には空いっぱいに広がる無数のしゃぼん玉の姿が、瞼裏にはひとりぼっちで消えていったしゃぼん玉の残像が、くっきりと残っていた。
ふ、と唇が歪む。なんて昔の夢を見たんだろう。
もう何年も前のことだ。あの三人と、あんなふうに楽しく過ごしていた日々は。
二度とあんな時間は過ごせないだろう。
過去には、戻れない。
未来にも、飛んでは行けない。
あるのは、現在(いま)だけ。
なんにも知らなかった昔の能天気な自分を懐かしんだって、振り返るときらきら輝いて見えるあのころが眩しいだけだ。
将来どんな出来事が待ち受けているか想像を巡らせたって、それはどうせ希望的な観測だ。
『今』から逃げることはできない。逃げてはいけない。
「……起きなきゃ。行かなきゃ……」
かすれた声で呟く。
長い長い休みは、終わった。学校が始まる。
私はひとつ息を吐いて、のろのろと起き上がった。
レースカーテンが揺れる掃き出し窓に目を向ける。
ベランダの向こうにある外の世界は、呆れるほど鮮やかな光に満ちていて、私は眉を寄せて目を細めた。
脳裏には空いっぱいに広がる無数のしゃぼん玉の姿が、瞼裏にはひとりぼっちで消えていったしゃぼん玉の残像が、くっきりと残っていた。
ふ、と唇が歪む。なんて昔の夢を見たんだろう。
もう何年も前のことだ。あの三人と、あんなふうに楽しく過ごしていた日々は。
二度とあんな時間は過ごせないだろう。
過去には、戻れない。
未来にも、飛んでは行けない。
あるのは、現在(いま)だけ。
なんにも知らなかった昔の能天気な自分を懐かしんだって、振り返るときらきら輝いて見えるあのころが眩しいだけだ。
将来どんな出来事が待ち受けているか想像を巡らせたって、それはどうせ希望的な観測だ。
『今』から逃げることはできない。逃げてはいけない。
「……起きなきゃ。行かなきゃ……」
かすれた声で呟く。
長い長い休みは、終わった。学校が始まる。
私はひとつ息を吐いて、のろのろと起き上がった。
レースカーテンが揺れる掃き出し窓に目を向ける。
ベランダの向こうにある外の世界は、呆れるほど鮮やかな光に満ちていて、私は眉を寄せて目を細めた。