「じゃ、そういうことだから……」
 言いかけたとき、千秋が「それでも俺は」と遮った。
「それでも、光夏と一緒に、いたい」
 ひどいことを言われたのに、少しも揺らいでいない声だった。
 すぐには答えられなくて、ただ彼を見つめ返す。静かな瞳の奥に、青白い炎がちらちらと燃えているように思えた。きっと私の勘違いだ。
「ごめん」
 きっぱりと告げる。
「私といたって、いいことないよ」
 島野たちの顔を思い浮かべながら言った。でも、重すぎただろうかと不安になって、冗談だと思ってもらえるよう、はは、と乾いた笑いを取って付ける。
「私なんかいないほうが……三人のほうが、きっと楽しいと思うよ。……だから、もう、私のことは忘れて……」
「無理だよ」
 言い切らないうちに、千秋の声が私の言葉を遮った。思わぬ強さに私は目を見開く。
「忘れるなんて、できるわけないだろ」
 怒っているのかと驚いて見つめ返したけれど、彼の目は、苦しげに細められていた。
「光夏を忘れるなんて……」
「……それでも、忘れて」
 私はまた笑みを貼りつけて、「じゃあね」と彼らに背を向けた。
 まっすぐすぎる視線が、いつまでも背中に突き刺さっているような気がした。