でも、その言葉をまっすぐに受け取って心から喜べないのは、みんなが変わってしまった私を知らずに、共に過ごしたあのころの私に声をかけているのだと分かっているからだ。彼らの目にはきっと、あのころと変わらない優等生の私の幻影が映っているから。
 直視するのがつらくて、思わず目を逸らす。
「……そう言ってくれるのは嬉しいんだけど、でも……今の、私には……」
 俯き加減にぼそぼそと答える私の声を遮るように、千秋が「でも」と声を上げた。彼らしくない、ひどく強い口調で。
 驚いて目を上げると、また、透き通った眼差しに包まれる。波ひとつない湖のように穏やかで静かな瞳が、私をまっすぐに見つめている。
 寡黙な唇が開いて、「それでも俺は」と呟く。
「光夏に、一緒にいてほしい」
 息が止まるかと思った。
 時間が一気に巻き戻されたような感覚と、金色に輝く雪がはらはらと舞い落ちてくる幻覚に包まれた。
「俺と一緒にいて、光夏」
 懇願するような声音に、胸がぎゅうっと苦しくなる。
 でも、だめだ。無理なんだ。私はきつく目をつむり、金色の幻影を頭から追い出す。
「……なに言ってんの」
 低く、冷たい声で告げる。
「私はもう千秋たちと一緒に……いたくない、から」
 本当は、こんなことは言いたくなかった。でも、今の私がどんなに情けないかを、彼には知られたくないから、こうでも言わないと断れないと思ったのだ。
 春乃と冬哉が息をのむのが分かった。
 きっと傷つけた。ごめん、と心の中だけで謝る。不快な思いをさせると分かっていて、この言葉を選んだ。どういうつもりか知らないけれど、わざわざ私に声をかけてくれたのに、あえてきつい言葉を叩きつけた。
 でも、こう言うしかないのだ。それが私にとっても三人にとってもいいことだと思う。