「いや、ごめんだけど……」
なんと言って断ろう、と考えたものの、なにも思いつかなくて、適当な嘘をつく。
「……用事があって急いでるから。他を当たって」
じゃあね、と立ち去ろうとした瞬間、後ろから強く腕を引かれた。驚いて振り向くと、千秋が私の手首を握っている。
「千秋……」
彼はゆっくりと瞬きをしてから、つかんだ手を見下ろし、ふうっと息を吐き出しておもむろに顔を上げた。その拍子に、長い前髪がさらりと揺れ、隙間から現れた双眸がまっすぐにこちらを見ている。私の心を覗き込み、奥深くまで見透かそうとしているように、私には思えた。
「光夏」
ひどく静かなのに、眩しいほどにきらきらと輝く、満天の星空のような瞳。星は空気が綺麗なときほどくっきり美しく見えると言うけれど、千秋の目がこんなに綺麗なのはそれと同じで、誰よりも純粋で透明で澄み切っているからなのだろうか。
「ごめん……光夏」
彼がぽつりと呟いた。
「え……」
なぜ謝るのだろう。唖然と見つめていると、千秋の手がぎゅっと私の手を握り、それからそっと離れた。
「……痛かった?」
ああ、それを心配していたのか。相変わらずだな、千秋は。そう思うと、自然と口許が緩んだ。久しぶりの感覚だ。
なんと言って断ろう、と考えたものの、なにも思いつかなくて、適当な嘘をつく。
「……用事があって急いでるから。他を当たって」
じゃあね、と立ち去ろうとした瞬間、後ろから強く腕を引かれた。驚いて振り向くと、千秋が私の手首を握っている。
「千秋……」
彼はゆっくりと瞬きをしてから、つかんだ手を見下ろし、ふうっと息を吐き出しておもむろに顔を上げた。その拍子に、長い前髪がさらりと揺れ、隙間から現れた双眸がまっすぐにこちらを見ている。私の心を覗き込み、奥深くまで見透かそうとしているように、私には思えた。
「光夏」
ひどく静かなのに、眩しいほどにきらきらと輝く、満天の星空のような瞳。星は空気が綺麗なときほどくっきり美しく見えると言うけれど、千秋の目がこんなに綺麗なのはそれと同じで、誰よりも純粋で透明で澄み切っているからなのだろうか。
「ごめん……光夏」
彼がぽつりと呟いた。
「え……」
なぜ謝るのだろう。唖然と見つめていると、千秋の手がぎゅっと私の手を握り、それからそっと離れた。
「……痛かった?」
ああ、それを心配していたのか。相変わらずだな、千秋は。そう思うと、自然と口許が緩んだ。久しぶりの感覚だ。