「……かなあ。うーん……」
　春乃が両頬に手を当ててうなだれ、冬哉は髪をくしゃりとつかみながら頷く。
「……やっぱ……しかないだろ」
「んー、……だけど……」
　二人が悩ましげに溜息をついた。
「なあ、お前はどう思う？　千秋」
　冬哉に訊ねられて、それまで二人の顔を交互に見ていた千秋が、「俺としては」と口を開いた。
「……するのが、いちばんいいと思う」
「……最初から……って言ってたな」
「うん……だろうから」
「でも、あいつ、……てくれるかな？」
　冬哉の言葉に、千秋は「うーん……」と考えを巡らせるように視線を泳がせる。そして、ふいにその目がこちらへ向いた。
「あ」
「あ」
　私と千秋の声が重なる。怪訝そうに振り向いた春乃が、目を丸くした。
「あっ、光夏ちゃんだ！」
　ああ、見つかってしまった。私はがっくりと肩を落としながら、俯きがちに「どうも……」と言った。
　三人が席を立ち、目の前までやって来た。
「おー、偶然だな、光夏」
　軽く手を上げて私に言うと、冬哉は振り向いて千秋と春乃を見た。
「今、いいよな？」
　どういう意味か分からないけれど、彼は二人になにかを確認するように訊ねる。
「うん」
「もちろん」
　千秋と春乃がこくりと頷くと、冬哉はにこりと笑って私を手招きした。
「せっかくだから、光夏も入らない？」
「えっ？」
　まさかそんな話になるなんて予想もしていなかったから、声が裏返るほど驚いてしまった。
「えっ、いや、なんで？　なんで私が……。三人でなにか話してたんでしょ？」
「いや、でも、光夏にも相談したくて」
「相談!?」
　さらに声が裏返る。もう何年も話していない私に、なんの相談があると言うのだろう。恋愛？　進路？　どちらにせよ、私には的確なアドバイスなんてできない。色恋沙汰も将来の展望も、今の私にとっては考える余裕なんてないのだ。