自分に言い聞かせながらそっと覗きこんだ瞬間、思わず声を上げそうになってしまった。
 教室の端に机を固め、肩を寄せ合うようにしてなにかを話し込んでいる様子の生徒たちは、どう見ても幼馴染の三人だったのだ。
 こんなところでなにをしてるんだろう。気づかれたら面倒だと思いつつも、疑念が勝ってしまい聞き耳を立てる。
「……だもんね。やっぱり……ってことかな」
「かもな。……に……があって……」
「どうして……なんか、したんだろう……」
 切れ切れに聞こえてくる、春乃と冬哉の会話。内緒話のように声をひそめているので、その内容までは聞き取れなかった。
「まあ、それはさておき、計画を……」
「……とかは?」
「うーん……性格的に……」
「じゃあ、……っていうのは?」
「それ、いいかも。でも……」
 いったいなんの話をしているのか、やけに深刻そうな顔をしている。
 彼らの姿を見ていて、ふいに昔のことを思い出した。子どものころ、原っぱの片隅に四人でつくった秘密基地。一メートル四方ほどしかない狭い中で、膝を突き合わせるようにして『次はなにをして遊ぼうか』と真剣に作戦会議をしていたときのこと。
 四人でいればいつだって楽しくて、馬鹿みたいにいつも大笑いしていたような気がする。思い出補正、というやつかもしれないけれど。
 きっとあのときの私たちはこういうふうに見えていたんだろうな、と思いながら、三人をぼんやりと眺める。
 昔はいつも四人だった。あの中に、私もいたのだ。
 でも、今となってはまるで夢か幻のようだった。もう戻れない。だって、千秋も春乃も冬哉も、すごく遠い。私は彼らからこんなにも遠く離れてしまった。こんな情けない自分なんて、彼らにだけは見られたくない。