2017-10-07
第三十七回#Twitter300字ss
お題:「酒」より改稿

※八代の「アルコール分解酵素が少ない」設定が固まる前(本編完結前)に書いたお話なので若干の矛盾がありますがご容赦ください

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「フルーティな吟醸香、甘いクリーム、リッチなブリオッシュ、超絶美味い!」
 店長の東八代は、フォークを持ったまま身悶えた。
 口の中でシロップがじゅわりと広がる。純米大吟醸酒サバラン『米寿』は、魔法菓子店ピロートの通が好む一品だ。
「世界が明るい! 今ならなんでもできる!」
「それ、酔ってるだけ。下戸なのに無理しないの」
 酔った八代を横目に、パティシエの蒼衣は呆れた顔だ。
「八十八歳以上の人が食べれば神様の力が宿るかもしれないけど。八代には無理だよ」
「じゃあおれ、それまで生きるから、そんときに食わせてくれ」
「……僕も一緒に八十八歳まで生きろってこと?」
 真面目に頷く八代を見て、蒼衣は心の底から嬉しそうな顔をした。