変り映えのしない日々が過ぎて行く。
朝起きて仕事に行き、ルーチンワークをする。終われば真っ直ぐにアパートに帰る。
帰宅して郵便受け覗くと、今日もミドリの手紙が入っていた。
もう慣れてしまって、動揺しない。
部屋に入りチェストに手紙を仕舞い、夕飯の支度を始めた。
気が付けば、隣室からクラシックの音色が聞こえて来た。
徐々に大きく耳障りになっていく音楽に、私は眉をひそめた。
ちょっと音が大きすぎる。常識の有りそうな三神さんのやることとは、思えない。
壁の向こうの様子を透かすような気持ちで見ると、まるで気付いたようにピタリと止んだ。
転職したいと考えながらも、何の活動も出来ないでいた。
来月には誕生日が来て、二十三才になる。このままなんとなく過ごしていたら、二十四才になるのもあっという間だ。
焦りながらも、時間にもお金にも余裕がなく具体的な行動に踏み出せていない。
その日は、珍しく外出の用事を言いつけられ、出先からそのまま帰る事になった。
運良く用件はすぐに済み、いつもより早く自宅の最寄り駅に着いた。
途中スーパーに寄って、数日分の食材を買ってからアパートに帰る。
今日も手紙が来ているのだろうか。
深く考えないようにしてるけれど、あまりにしつこいミドリの行動にうんざりしていた。
何を考えているのか知らないけど、メッセージが有るなら、直接会いに来ればいいのに。
憂鬱な気持ちになりながら歩いている内に、視界にアパートが入って来た。
けれど、異変に気付き足を止めた
アパート住人用のポストの前に、小柄な女性が佇んでいたのだ。
見慣れない女性だけれど、アパートの住人全てを把握している訳じゃないので、普段なら気にするほどでもない。
けれど女性から感じる何か異様な雰囲気が私に警戒心を持たせた。
見られているとは気付かずに、女性は動き始めた。
バッグから何か白い物を取り出すと、それをじっと見つめてから郵便受けに入れた。
その様子を、私は息をのみ見つめていた。
辺りは薄暗いけれど、それでもはっきりと見えた……あれは、連日のように届けられていた手紙。
どうして? あれはミドリからじゃなかったの?
驚きのあまり動けないでいると、女性がくるいと後ろを振り返った。
私と向かい合う形になり、自然と視線が重なり合う。その瞬間、女性は小さな悲鳴のような声を上げ顔を歪めた。
酷く動揺して逃げ出そうとする女性を、我に返った私は必死で追いかける。
素早く女性の腕を掴んで、逃げられないようにした。
「どういうつもり?!」
私の剣幕に恐れを感じているのか、女性の腕は小刻みに震えている。
けれど、気遣う余裕なんて私にも無くて、更に声を荒げて追求した。
「何のつもりで手紙を入れてるの? あなた誰なの?!」
私より少し背の低い女性を、上から睨むようにしながら言った。
体の全てが小作りで華奢な女性は怯えながらも、憎悪を隠さなかった。
「恨まれる様なことをするから悪いんでしょ?!」
「……私が何をしたって言うの?」
こんな人、私は知らないし、人に恨まれる覚えも無いのに。
朝起きて仕事に行き、ルーチンワークをする。終われば真っ直ぐにアパートに帰る。
帰宅して郵便受け覗くと、今日もミドリの手紙が入っていた。
もう慣れてしまって、動揺しない。
部屋に入りチェストに手紙を仕舞い、夕飯の支度を始めた。
気が付けば、隣室からクラシックの音色が聞こえて来た。
徐々に大きく耳障りになっていく音楽に、私は眉をひそめた。
ちょっと音が大きすぎる。常識の有りそうな三神さんのやることとは、思えない。
壁の向こうの様子を透かすような気持ちで見ると、まるで気付いたようにピタリと止んだ。
転職したいと考えながらも、何の活動も出来ないでいた。
来月には誕生日が来て、二十三才になる。このままなんとなく過ごしていたら、二十四才になるのもあっという間だ。
焦りながらも、時間にもお金にも余裕がなく具体的な行動に踏み出せていない。
その日は、珍しく外出の用事を言いつけられ、出先からそのまま帰る事になった。
運良く用件はすぐに済み、いつもより早く自宅の最寄り駅に着いた。
途中スーパーに寄って、数日分の食材を買ってからアパートに帰る。
今日も手紙が来ているのだろうか。
深く考えないようにしてるけれど、あまりにしつこいミドリの行動にうんざりしていた。
何を考えているのか知らないけど、メッセージが有るなら、直接会いに来ればいいのに。
憂鬱な気持ちになりながら歩いている内に、視界にアパートが入って来た。
けれど、異変に気付き足を止めた
アパート住人用のポストの前に、小柄な女性が佇んでいたのだ。
見慣れない女性だけれど、アパートの住人全てを把握している訳じゃないので、普段なら気にするほどでもない。
けれど女性から感じる何か異様な雰囲気が私に警戒心を持たせた。
見られているとは気付かずに、女性は動き始めた。
バッグから何か白い物を取り出すと、それをじっと見つめてから郵便受けに入れた。
その様子を、私は息をのみ見つめていた。
辺りは薄暗いけれど、それでもはっきりと見えた……あれは、連日のように届けられていた手紙。
どうして? あれはミドリからじゃなかったの?
驚きのあまり動けないでいると、女性がくるいと後ろを振り返った。
私と向かい合う形になり、自然と視線が重なり合う。その瞬間、女性は小さな悲鳴のような声を上げ顔を歪めた。
酷く動揺して逃げ出そうとする女性を、我に返った私は必死で追いかける。
素早く女性の腕を掴んで、逃げられないようにした。
「どういうつもり?!」
私の剣幕に恐れを感じているのか、女性の腕は小刻みに震えている。
けれど、気遣う余裕なんて私にも無くて、更に声を荒げて追求した。
「何のつもりで手紙を入れてるの? あなた誰なの?!」
私より少し背の低い女性を、上から睨むようにしながら言った。
体の全てが小作りで華奢な女性は怯えながらも、憎悪を隠さなかった。
「恨まれる様なことをするから悪いんでしょ?!」
「……私が何をしたって言うの?」
こんな人、私は知らないし、人に恨まれる覚えも無いのに。