雪香の部屋に隠すようにして有った手紙と、全く同じ文面だったから。
念の為、持ち出した手紙を取り出し並べてみたけれど、やっぱり間違いなく、同じものだった。

「ミドリに明後日会うことになった。会社まで迎えに行くから用意しとけよ」
「明後日……どこで会うの?」
「リーベル。俺の店だ」

 雪香も常連だったという蓮の店か。正直勝手の分からない場所でミドリに会うのは気が進まなかった。

「他の場所じゃ駄目なの?」

 蓮は私の返事が不満だったのか、ふてくされたように言う。

「適当な場所が他に無い。あまり人に聞かれたくない話だしな」
「……分かった」

 妥協するしかないようだ。蓮と時間の確認をしてから、電話を切った。


 二日後。会社近くに迎えに来た蓮に連れられ、彼の店リーベルに向かった。
移動時間は車で十五分程とオフィス街からも近い好立地。
 外から中の様子が分る初めてでも入りやすそうな店構えで、健全と言える。
 蓮の店だから、怪しい、いかがわしい雰囲気を想像していたけど、まるで違った。

「行くぞ」

 蓮はぼんやりと突っ立っていた私に声をかけ、扉を開き中へ入って行く。
外観から予想はしていた通り、かなり広々としている。
 入って右手が大きなカウンター席で、反対側はテーブル席になっていた。
程よいボリュームの音楽と楽しそうな人々の話し声。女性が一人で来ても、居心地が良さそうだ。

 蓮はスタッフと短い会話を交わしてから、私を振り返り言った。

「この先の部屋でミドリが待ってる」

 私は緊張しながら頷いた。ついにミドリと対面する時が来た。
 昨夜から頭の中で、何度もミドリとの会話をシミュレーションしてきた。
 ミドリが言い逃れようとしたって、誤魔化されない自信が有る。

「あの部屋ね? じゃあ行って来るから」
 
 気持ちを奮い立たせ宣言すると、蓮は眉間にシワを寄せた。

「俺も行く」
「えっ、なんで?!」
「俺も同席ってのが会わせる条件だったろ? 嫌なら帰れよ」

 蓮は退く気が無いようで、私の前に立ち道を塞いでいる。
 最悪だ。でもここまで来たら行くしかない。

「分かった。行きましょう」

 蓮は道を開け奥の部屋に向かって歩き出す。私も後に続いて部屋に入った。