その言葉に反応して、蓮は不機嫌そうに眉をひそめた。

「嘘ってなんだよ?」
「雪香の友達に聞いたんだけど、あなた雪香と付き合っていたんだってね。それに雪香の通っていた店で働いてると聞いた。私が聞いていた内容と大分違うからびっくりしたわ」

 蓮は嘘がばれたというのに慌てる様子もなかった。私の話を無表情で聞き終えると、冷めた目を向けて来た。

「あんたは、その話を聞いて俺が嘘を言ったと決めつけたのか」
「事実でしょ?」

 蓮の瞳に怒りが宿った。

「違う、その友達って奴の方が嘘を吐いてる」
「どうして? 彼女達が嘘つく必要がないでしょ」

 強い口調で言い返すと、蓮は一瞬黙り込んでから答えた。

「嘘じゃないなら誤解している。俺の言ったことが真実なんだからな」
きっぱりと言い切る蓮の態度に嘘やごまかしは見られない……本当に嘘じゃないの?
「……雪香が通ってた店とは何の関係も無いの?」

 蓮は、少し考えてから答えた。

「その店は、俺のやってる店じゃないか?」
「俺の店って何?」
「俺が出資してる店。人に任せてるけど、たまに様子を見に行ってる」

 唖然とした。まさかオーナーだったとは……。

「店の件は分かったけど、雪香と付き合っていたって話は?」
「それも誤解だ、雪香とは本当にただの幼なじみだからな」

 蓮は即答した。

「でもさっき雪香のアルバムを見たんだけど、あなたの写真ばかりだった。雪香はとても楽しそうな笑顔で、婚約者の直樹との写真よりずっと幸せそうだった。それはどうしてだと思う?」
「どうしてって……」

 蓮は今度は口籠もった。だけどきっと答えが分からないからじゃない。

「あなたを好きだからに決まってる……本当は気付いてるんでしょ? 私が雪香を嫌っていると、一目で見抜いたくらいだものね」

 断言すると蓮は顔を強張らせた。睨むような強い視線を向けて来る。

「そうだとしてもあんたには関係無い。余計な詮索するな」

 やっぱり……思った通り蓮は雪香の気持ちに気付いていた。
 付き合っていないのは本当かもしれないけど、少なくとも二人はただの幼なじみじゃなかった。蓮は嘘を言ってたんだ。
 失望を覚えながら、冷ややかに言う。

「確かに二人の関係について私は無関係。でもあなたを信用しない理由にはなるけど?」

 蓮は思い切り舌打ちをした……雪香は、こんな短気な男のどこが良かったのだろう。