私の事で、嫉妬に狂うなんて無かったから。
気持ちが沈んで、これ以上話をするのが億劫になった。駅までの道を私達は無言で歩く。
直樹はまだ雪香を探す気があるのだろうか。探す事によって、知りたく無い事実まで耳に入ってしまう。精神的にキツいんじゃないの?
駅に着いてもまだ浮かない表情の直樹に、私は少し躊躇いながら声をかけた。
「私はまだ雪香を探すけど直樹はどうするの?」
私としては、雪香の友達のおかげで手掛かりは掴んだし、もう直樹と協力する必要は感じていなかった。
直樹は手を引いた方がいい。
雪香が消えた日から、私が考えていたこと。
―雪香は直樹を愛していなかったのかもしれない―
その疑いが、今日私の中で確信に近くなった。
雪香が本当に好きなのは、きっと昔から変わらず蓮なんだ。
このまま雪香を探しても、直樹は傷付くだけだと思う。ただでさえ結婚式当日に、花嫁に消えられたという屈辱を受けているのに、蓮の存在まで知ったら立ち直れなくなるかもしれない。
別に直樹に同情してる訳じゃない。雪香の本心を見抜けないまま結婚しようとしたのは、彼のミスだ。
けれど、雪香の事で悩んだり苦しんだりしている直樹を見るのは嫌だった。
「直樹はしばらく休んだら? 何かあったら連絡するから」
私がそう言うと、直樹は少し考えてから頷いた。
「来週からは仕事にも行かなくちゃいけないから、なかなか動けないと思う。沙雪に任せるけど何か分かったら必ず連絡しろよ」
「分かった」
直樹の言い分が図々しく思え、少しの苛立ちを感じたけれど了解して直樹と別れた。
アパートに向かいながら、次の行動について思案した。
しばらく考えてからスマートフォンを取り出し、今までかけたことの無かった番号に発信した。
土曜日、私は雪香の家を訪ねた。
雪香が居なくなって心細いのか、母は私を歓迎してくれた。
「沙雪……良かった来てくれて」
母は顔色が悪くやつれている。雪香の失踪が相当堪えているのが見てとれた。
「お母さん、大丈夫?」
長い間離れ離れで馴染みの薄い母親だけど、それなりに心配では有る。
「警察からは何の連絡も無いの。本当に探してくれてるのかしら……今頃あの子がどんな目に遭っているかと思うと夜も眠れないわ」
「どんな目って……雪香は自分の意志で姿を消したのかもしれないし……」
気持ちが沈んで、これ以上話をするのが億劫になった。駅までの道を私達は無言で歩く。
直樹はまだ雪香を探す気があるのだろうか。探す事によって、知りたく無い事実まで耳に入ってしまう。精神的にキツいんじゃないの?
駅に着いてもまだ浮かない表情の直樹に、私は少し躊躇いながら声をかけた。
「私はまだ雪香を探すけど直樹はどうするの?」
私としては、雪香の友達のおかげで手掛かりは掴んだし、もう直樹と協力する必要は感じていなかった。
直樹は手を引いた方がいい。
雪香が消えた日から、私が考えていたこと。
―雪香は直樹を愛していなかったのかもしれない―
その疑いが、今日私の中で確信に近くなった。
雪香が本当に好きなのは、きっと昔から変わらず蓮なんだ。
このまま雪香を探しても、直樹は傷付くだけだと思う。ただでさえ結婚式当日に、花嫁に消えられたという屈辱を受けているのに、蓮の存在まで知ったら立ち直れなくなるかもしれない。
別に直樹に同情してる訳じゃない。雪香の本心を見抜けないまま結婚しようとしたのは、彼のミスだ。
けれど、雪香の事で悩んだり苦しんだりしている直樹を見るのは嫌だった。
「直樹はしばらく休んだら? 何かあったら連絡するから」
私がそう言うと、直樹は少し考えてから頷いた。
「来週からは仕事にも行かなくちゃいけないから、なかなか動けないと思う。沙雪に任せるけど何か分かったら必ず連絡しろよ」
「分かった」
直樹の言い分が図々しく思え、少しの苛立ちを感じたけれど了解して直樹と別れた。
アパートに向かいながら、次の行動について思案した。
しばらく考えてからスマートフォンを取り出し、今までかけたことの無かった番号に発信した。
土曜日、私は雪香の家を訪ねた。
雪香が居なくなって心細いのか、母は私を歓迎してくれた。
「沙雪……良かった来てくれて」
母は顔色が悪くやつれている。雪香の失踪が相当堪えているのが見てとれた。
「お母さん、大丈夫?」
長い間離れ離れで馴染みの薄い母親だけど、それなりに心配では有る。
「警察からは何の連絡も無いの。本当に探してくれてるのかしら……今頃あの子がどんな目に遭っているかと思うと夜も眠れないわ」
「どんな目って……雪香は自分の意志で姿を消したのかもしれないし……」