直樹から連絡が来たのは、それから二日後。
雪香の大学時代の友人と、会う約束をしたとのことだった。
場所は先日直樹と会った店。
私は急ぎで仕事をこなし、時間通りに待ち合わせの店に向かった。
奥の席に派手な服装の女性二人と向かい合わせで座っている直樹を見つけ、店員の案内を待たずに席に向かった。
「沙雪……早かったな」
私に気付いた直樹が言うと、二人の女性も視線をこちらに向けて来た。
「あ、雪香の……」
彼女たちの顔に、驚きが広がっていく。私は直樹の隣に座ると、笑顔を浮かべ、二人の女性に挨拶をした。
「雪香の姉の倉橋沙雪です。今日は時間を作って頂きありがとうございます」
「あ……別に大丈夫です、私達暇だし、ねえ?」
紫のワンピースの女性が、もう一人の女性に同意を求める。
「うん、退屈してたしね」
冬だというのに、ノースリーブの女性が頷く。
暇だなんて、二人とも働いて無いのだろうか。
ノースリーブの方の腕には、高級ブランドの時計がつけられているし、雪香の友人だけあって、実家が裕福なのかもしれない。
そういえば、あの鷺森蓮も働いていないと言ってた。
この短い会話の中で、私は世の中の不公平さを痛感した。
私はいくら頑張って働いても、あの時計を買えない。
でもこの二人は……雪香は、鷺森蓮は、苦労無く涼しい顔をして手に入れるのだろう。
あんな時計が欲しい訳じゃないし、比べても仕方ないと分かっているのに、気持ちが重くなる。
「電話でも話したけど、今日は雪香の事を聞きたくて来てもらったんだ」
直樹の声が聞こえて来て、考えこんでいた私の意識は浮上した。私は直樹に続き口を開いた。
「もう知ってると思うけど、雪香が失踪したんです。それで、私達は雪香を探していて……雪香の交遊関係を教えて欲しいんです。それから雪香の様子ですが、何か変わった事はありませんでしたか?」
私の言葉に、二人は顔を見合わせてから、納得したように頷いた。
「あー……やっぱり雪香がいなくなったのって本当だったんだ。私達結婚式には呼ばれて無かったけど噂で聞いてて」
ワンピースの女性がそう言うと、ノースリーブの女性も相槌をうった。
「ほんと、びっくりしたよね……あっ、それで雪香の交遊関係って言われても微妙なんですよね」
「微妙って?」