注文を取り終えても、蓮とミドリはまだ何やら賑やかに揉めていた。
 その光景に自然と顔が綻んで来る。
 温かい気持ちになりながら、私は奥に引っ込み飲み物の用意を始めた。

 こうやって過ごす毎日に、喜びを感じた。
 直樹と雪香を恨み、一人で生きて行くと思いつめていた日々が、もう遠い昔の事に思える。
 
 辛い記憶が消える事は無いけれど、思い出しても傷付かなくなっていた。
 傷付くのを恐れ人との関わりを避ける気持ちもなくなった。
 いつか……時が経って私と雪香がもっと成長出来たら、もう一度二人向き合えるかもしれない。


 その時は、今度こそ雪香を祝福しよう。
 きっと出来ると思う。
 だって私は今幸せで……未来も幸せだろうと信じる事が出来るから。


『はじまりは花嫁が消えた夜』完結