突然小声になった蓮に、私は眉をひそめながら答える。
「ここは働きやすいけど、でもいつまでもバイトっていうのもね。やっぱり正社員になりたいし」
「だから、バイトじゃなくて……俺と一緒に店を……」
蓮は更にもぞもぞとした小声になり、何を言ってるか分からない。
聞き返そうとした瞬間、ミドリの料理が出来上がって来た。
「あっ、コーヒーの用意しなきゃ!」
慌ててグラスにコーヒーを注ぎ、料理と一緒にトレーに乗せた。
「おい、まだ話が……」
「ミドリが待ってるから、先に運んで来る」
蓮が何か言っていたけれど、お腹を空かせたミドリをこれ以上待たせられない。
私は急いで、ホールに向かった。
「ミドリお待たせ」
ミドリの座るカウンター席に料理と飲み物を並べる。
「ありがとう」
彼は落ち着いた動作でフォークを手に取り、ゆっくりとサラダを食べ始めた。
私はカウンターの内側に回り、細々とした雑用を始めた。
「沙雪、今度海外出張に行くんだ。お土産何がいい?」
まだ食事の途中だったけど、ミドリが思い出したように言った。
「え? 海外ってどこに行くの?」
ミドリは商社で働いてるから、海外出張がときどきあるそうだ。
「スペインだよ」
「スペインか、私行ったこと無いな……と言うより海外旅行自体事無いんだ」
「え? そうなのか?」
「うん、珍しいでしょ? でも今までそんな余裕無かったしね」
私がそう言うと、ミドリは柔らかな表情になった。
「じゃあ今度一緒に行こう、初めてならどこに行くか選ぶ楽しみも有るね」
「うん、パンフレットとかは良く見て憧れていてね、私が行きたいのは……」
「おい! いつまでサボってんだよ?!」
楽しく話していると、見るからに不機嫌な蓮がやって来た。
「あ……すみません」
仕事中は蓮が上司だから、素直に頭を下げる。
「俺が話しかけたんだよ、接客もスタッフの大事な仕事だろ?」
ミドリが庇ってくれたけれど、蓮は更に気分を悪くしたようで、イライラと言い放った。
「ここは、そういう店じゃないんだよ! 女について欲しけりゃ別の店行けよ!」
女って……滅茶苦茶な言い分の蓮に、ミドリは溜め息を吐き、私も冷たい視線をこっそり送った。
「沙雪、テーブル席の注文取ってこいよ」
気付かれてしまったのか、蓮の鋭い声が飛んで来る。
「はい……」
私は言われた通り、テーブル席に向かった。
「ここは働きやすいけど、でもいつまでもバイトっていうのもね。やっぱり正社員になりたいし」
「だから、バイトじゃなくて……俺と一緒に店を……」
蓮は更にもぞもぞとした小声になり、何を言ってるか分からない。
聞き返そうとした瞬間、ミドリの料理が出来上がって来た。
「あっ、コーヒーの用意しなきゃ!」
慌ててグラスにコーヒーを注ぎ、料理と一緒にトレーに乗せた。
「おい、まだ話が……」
「ミドリが待ってるから、先に運んで来る」
蓮が何か言っていたけれど、お腹を空かせたミドリをこれ以上待たせられない。
私は急いで、ホールに向かった。
「ミドリお待たせ」
ミドリの座るカウンター席に料理と飲み物を並べる。
「ありがとう」
彼は落ち着いた動作でフォークを手に取り、ゆっくりとサラダを食べ始めた。
私はカウンターの内側に回り、細々とした雑用を始めた。
「沙雪、今度海外出張に行くんだ。お土産何がいい?」
まだ食事の途中だったけど、ミドリが思い出したように言った。
「え? 海外ってどこに行くの?」
ミドリは商社で働いてるから、海外出張がときどきあるそうだ。
「スペインだよ」
「スペインか、私行ったこと無いな……と言うより海外旅行自体事無いんだ」
「え? そうなのか?」
「うん、珍しいでしょ? でも今までそんな余裕無かったしね」
私がそう言うと、ミドリは柔らかな表情になった。
「じゃあ今度一緒に行こう、初めてならどこに行くか選ぶ楽しみも有るね」
「うん、パンフレットとかは良く見て憧れていてね、私が行きたいのは……」
「おい! いつまでサボってんだよ?!」
楽しく話していると、見るからに不機嫌な蓮がやって来た。
「あ……すみません」
仕事中は蓮が上司だから、素直に頭を下げる。
「俺が話しかけたんだよ、接客もスタッフの大事な仕事だろ?」
ミドリが庇ってくれたけれど、蓮は更に気分を悪くしたようで、イライラと言い放った。
「ここは、そういう店じゃないんだよ! 女について欲しけりゃ別の店行けよ!」
女って……滅茶苦茶な言い分の蓮に、ミドリは溜め息を吐き、私も冷たい視線をこっそり送った。
「沙雪、テーブル席の注文取ってこいよ」
気付かれてしまったのか、蓮の鋭い声が飛んで来る。
「はい……」
私は言われた通り、テーブル席に向かった。