自分の行動の結果どうなるのかを、予想出来ないように感じる。
 だからその場の感情にまかせ、私からすれば信じられないような行動に出る。

「蓮には相談出来なかった。突然決まった直樹との結婚にもいい顔をしていなくて、そんなときに三神さんの話をしたら凄く怒ると思った。それに遊んでいたことも全て調べられて大事になる気がした」

 蓮に関しては深く考えられるんだ……複雑な思いで雪香を見つめる。

「私は困って、遊んでいた時に知り合った海藤にお願いしたの。三神さんを追い払って二度と近付けないようにして欲しいって」
「え? 二度と近付けないようにって……そんなふうに頼んだの?!」

 私が驚きの声を上げるのを、雪香は不思議そうに見ている。

「どうしたの?」

 私の反応の意味が、本当に分からないのだ。

「どうして海藤にそんなこと言ったの? 海藤こそ危険な相手だと思わなかったの? 大きな揉め事にしたくなかったんじゃないの? 雪香は何もされなかった?」

 海藤がただで頼み事を聞くとは思えない。

「海藤は普通じゃないとは思ったけど、だからこそ三神さんを追い払うには最適だった。実際に海藤はすぐに動いてくれて、三神さんは二度と私の前には現れなかったから」
「……海藤は三神さんに何したの?」
「具体的には聞いてないけど……お金を渡したのと、それから少し脅しただけだって言ってた」

 そんな訳ない。三神さんはきっと海藤に相当酷いことをされた。

 だからこそ、あれほどの恨みを持っていた……眩暈がする。

「……雪香は海藤に何か要求されたりしなかった?」
「実は……頼みを聞いて貰うお礼にお金を払う約束をしたの」
「……そのお金っていくら払う約束だったの?」

 嫌な予感でいっぱいになりながら聞くと、雪香は小さなため息の後に答えた。

「二百万円」

 悪い予想は当たってしまった。

「雪香はそのお金をどうするつもりだったの?」
「ちゃんと払うつもりだったよ。それ位のお金はなんとかなりそうだったから」
「でも実際は払ってないよね? 海藤は私のところに取り立てに来たんだから!」

 あの時海藤を恐れるあまり、詳しい事情は聞きだせなかった。裕福な雪香がなぜ借金なんてしたのか不思議だったけれど、まさか私が関係しているなんて思いもしなかった。

「いろいろあって払うのが遅れてしまっていたけど、結婚式が終わったら渡すつもりだったの」