「三神早妃のことを責める為だったようだ。本当に沙雪かを確かめもせずに、感情的に喚いて来たそうだよ……さっき彼に考え無しと言ったのはそのせいだ」

 ミドリはそう言ったけれど、私は三神さんが間違ったのは無理無いと思った。
 その頃の三神さんは私と一度しか会ったことが無かったし、私に双子の妹が居るなんて知らなかったはずだから。

 それでもいくつかの疑問は残った。

「間違ったのは仕方ないとしても、雪香は人違いって言ったんでしょ? それでも三神さんは信じなかったの? それに私に文句が有ったのなら、どうして部屋に来なかったの?」

 わざわざ外で探さなくても、部屋に来た方が早いのに。

「三神が何故直接部屋に来なかったのかは分からない。何か理由は有るはずだけどね……それから雪香は人違いだと言わなかったそうだ」
「えっ、どうして?」
「雪香は三神の話を聞いて、だいたいの事情を察したそうだ。それで……雪香は沙雪のふりをしたまま、三神との揉め事を解決しようとしたそうだ。どうしてそんな考えになったのかは、俺に理解出来ないけど」
「雪香が……どうして」

 ミドリと同じで、私にも雪香の気持ちが分からない。

「どうやって三神さんを納得させたの?」
「雪香は三神が、それ以上絡んで来れないような手を打ったんだ」
「……どうやったの?」

 あの執念深い三神さんを遠ざける方法なんて、有ったのだろうか。

「雪香はね、三神より危険な人物を使って彼を脅したそうだ……海藤って言う男だそうだ」

 さっきから驚いてばかりだけれど、今度はもう言葉も出なかった。

 雪香に貸したお金を返せと、私を脅して来た忘れもしない男、海藤。まさか三神さんの件に関係していたなんて、思いもしなかった。

 もっと聞きたいことはあるけど、頭はパンクしそうだった。ボンヤリしてしまい考えがまとまらない。

 そうしている間に警察がやって来たので、ミドリと話している場合ではなくなってしまった。

 三神さんは拘束された。私達も事情を話さなくてはいけない。