心臓が痛い位、ドクドクと脈打つ。
 そんな私に、三神さんが、ゆっくりと近付いて来た。

「……何のつもり?」

 怯えているのを知られたくなくて強く言ったつもりなのに、出た声は掠れて弱々しかった。
 三神さんは私の目の前で立ち止まると、冷ややかな目で見下ろして来た。

「君にはしばらくここに居てもらう」

 その言葉に大きな衝撃を受けながら三神さんを見上げた。
 何かの冗談だと思いたかった。
 けれど、彼の表情を見れば本気なのは疑いようも無いと分かる。
 罵りたいのに、声が出ない。圧倒的に不利な状況に、身動き出来ずにいると三神さんが口を開いた。

「倉橋さんは、自分がこんな目にあう理由分かってる?」
「……理由なんて分からないけど……雪香が関係してるんでしょ?」

 ガタガタと震えそうになるのを、手をキツく握って耐える。

「……雪香?」

 三神さんは、呆れた様な表情で私を見る。
 優位に立っているからか私を見下すような態度の彼に、恐怖と共に怒りも湧いて来た。

「……こんなことをして許されると思ってるの? 犯罪じゃない!」

 やっと出た強い声に、三神さんは少しだけ顔をしかめた。

「雪香ってのは倉橋さんの双子の妹だね、知ってるよ。君については全て調べたから」

 三神さんの言葉に、強い違和感を覚えた。
 なぜ、私の“双子の妹”という言い方をするの?
 彼と雪香の間に何か問題が有って、私はそれに巻き込まれたんじゃないの?

 今更のように気付いた事実に愕然とする。
 まさか……雪香は関係していない? 初めから私が狙われていたの?

「……どうして」

 何故私が、こんな目に遭わなくてはいけないのか分からない。
 雪香の問題さえ無ければ、私は誰にも迷惑をかけないで生活して来た。
 誰かに恨まれる程、人と関わってもいなかった。それなのにどうして……。

 真っ青になり震える私を、三神さんは憎しみを宿した目で見下ろしている。
 そして、まるで断罪するように告げた。

「君の罪は、全てを拒絶して来た事だよ」
「……どういう……意味?」

 拒絶したのが罪? いったい何のこと?
 私が何を拒絶したというの?
 三神さんは冷笑した。

「君はこう思ってるだろ? 何故こんな目に遭うんだろうって……自分は誰にも恨まれる様な人間ではない」
「……!」

 心情をピタリと言い当てられて、私は激しく動揺した。