このアパートは私にとって良くないことが起こり過ぎる。早く引っ越し先を見つけようと決心した。


 翌日目覚めると、お昼をとっくに過ぎていた。
 普段は休日でも寝過ごさないけれど、久しぶりに沢山飲んだ為かぐっすりと寝込んでしまっていた。
 蓮と三神さんのことが頭から離れず、なかなか寝付けなかったのも影響していそうだ。

 午前中を無駄にしてしまい、焦りを感じる。今日は不動産屋を見て回る予定なのに。
 二週間後には新しい会社に入社するから、それまでにアパートを見つけたい
 長いと思っていた休みも、あっという間に終わってしまいそうだった。
 
 手早く着替えを済ませ、外に出た。
 三神さんに会ったら嫌だなと不安が過ったけれど、そんなことは無くホッとした。
 いつもの音楽も聞こえないし、不在のようだ。
 今までも、休日は部屋に居なかったのかもしれない。

 急ぎ歩いて駅に向かい、まずは、今のアパートを紹介してくれた不動産屋に向かった。
 店内はまあまあ混んでいたけれど、それ程待つことなく窓口担当と話が出来た。

「今と同程度の家賃の物件を探してるんです。少し狭くなってもいいんですけど、治安が良いところを希望します」
「今の家賃はおいくらですか?」

 私は金額を言い、この不動産屋で紹介して貰った物件だと話した。

 アパート名を伝えると、女性社員は直ぐに分かったようだった。

「確かにあの辺りは、治安が良いとは言えないかもしれませんね」
「部屋は広くて気に入ってたんですけどね」
「そうですね、ただ女性の一人暮らしだと不安かもしれないですね。特に今は空き部屋が多く二階には一人きりですし」
「……え?」

 その発言に、私は眉をひそめた。

「あの、隣は住んでますよ。確かにもう一部屋は空いているようですけど」

 三神さんは、違う不動産屋の仲介で入居したのだろうか。
 そう考えたけれど、すぐに否定された。

「真ん中の部屋ですか? 確かに契約されていますけど、人の出入りは滅多に無いんじゃ無いですか?」
「どういう意味ですか?」

 契約しているのに、出入りしないなんて意味が分からない。
 そもそもあの部屋には、三神さんが住んでいる。
 女性社員の勘違いだと思いながらも、胸の中は嫌な予感でいっぱいになった。

「あの部屋は荷物置き場としての契約ですから、寝泊まりはしていないかと」
「うそっ!」

 話の内容に衝撃を受け、思わず高い声を上げてしまった。