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風呂上りに部屋着のスウェットに着替えて六畳の和室に戻ってくると、勉強机に置いておいたスマホにメッセージが届いていた。

【来週の土曜日、十時にバス停集合ね】

無機質な文字に続いて送られてきた、よろしくと吹き出しつきのパンダのスタンプに、思わずため息をつく。

汐花に返信する気が起きず、私はベッドの上で、スマホの画面を眺めながらゴロンと寝返りを打った。

(やっぱり、気が進まないな……)

他校の男子と遊園地に行くなんて、田舎の夕霧村に暮らす私にとっては一大事だ。

村中顔見知りしかいない環境の中で育ったせいか、よく知らない男子と一緒に遊園地に行くなんて抵抗しか感じない。

汐花は私の交友関係が狭いのは颯のせいだと思っているが、高校生になっても浮いた話ひとつないのは、やはり自分自身の問題である。

しばしの間スマホと睨めっこした後、汐花には悪いがやっぱり断ろうと思ったその時、インターホンが鳴り誰かが玄関の戸を開ける気配がした。

ベッドから起き上がり、玄関まで走るとそこにはTシャツとハーフパンツ姿の颯が立っていた。

「あれ、颯。どうしたの?」

「これ、皮剥いて」

そう言って差し出されたビニール袋を開けると、中には大きな梨が四玉も入っていた。

「まさか……」

「梨が食いたいって言ったらもいでくれた」

「呆れた……」

この梨を育てた人は、龍神に梨を乞われてさぞ有頂天になったことだろう。
龍神に直接供物を捧げたとあれば、満願成就は約束されたも同然である。

夕霧村の人々の龍神に対する信頼は絶大だ。

龍神は五穀豊穣、家内安全、無病息災、果ては恋愛祈願まで。あらゆる祈念を叶えると信じられている。

とりあえず、何でもいいから龍神に拝んどけばなんとかなるの精神だ。ある意味、逞しい。

しかし、拝まれる方の龍神がこの体たらくでは、拝む方も浮かばれないというもんだ。